桃田賢斗の「眼窩底骨折」見落としを検証

2020年02月10日 16時40分

桃田は1月15日にマレーシアから帰国したが、こんな事態になるとは…

 まさかの事態に2つの違和感が――。1月に遠征先のマレーシアで交通事故に巻き込まれて大ケガを負った、バドミントンの男子世界ランキング1位の桃田賢斗(25=NTT東日本)が事故から約3週間後に「右眼窩底骨折で全治3か月」と診断された件で、関係者から続々と“疑問”の声が上がっている。帰国後の国内検査で一度は「所見なし」と診断されながら、一転して真逆の展開に。「違和感」の指摘から東京五輪を不安視する声も出ており、穏やかではない。本紙は騒動を改めて検証し、今後を展望した。

 目の前で運転手が死亡した凄惨な事故が起きたのは1月13日の早朝。顔面を強打した桃田は現地の病院へ搬送され、顔3か所(顎部、眉間部、唇)の裂傷、全身打撲と診断された。15日に帰国した後、17日に改めて国内で精密検査を行った結果は「身体面に異常なし」。金メダルに最も近い男の“不幸中の幸い”に日本協会や陣営は安堵し、3日からの合宿で練習を再開させていた。しかし、桃田は「シャトルが二重に見える」と異変を訴え、目に特化した検査を受けたところ眼窩底骨折が発覚したのだ。

 実は、桃田は国内検査の当初から「目の違和感」を訴えており、なんと病院側も認識していたことが本紙の取材で分かった。実際に桃田と接見した関係者は「結論は『所見なし』でしたが、桃田本人の症状を加味した上で『要経過観察』となっていました」と説明。ちなみに、目以外にも気になる箇所があったというが、結果的に問題はなかったようだ。

 ともあれ、違和感を抱えながら2週間以上も過ごし、今になって骨折が発覚したことに対して、医療法人社団昌静会理事長の金村良治医師は「とても違和感を覚えます。スポーツ選手が自己申告で異変を伝えているのに、医療機関が骨折を見落とすとはとても考えられない」と疑問を投げかける。別の関係者は「体を動かす中で骨折に至ったのかもしれない」との可能性を指摘したが、金村医師は「それはあり得ない」と医学的見地から否定する。

 では、なぜ帰国後の精密検査で骨折を確認できなかったのか。ある関係者はこう証言する。「頭の先からつま先まで、全身をくまなくMRIでチェックしました。もちろん、顔も検査しましたが、脳の損傷や首など、障害が出やすいところが中心だったので見落としたのかもしれません」

 もちろん、そうした可能性もあるというだけだが、桃田陣営にも「非常に遺憾です」と話す関係者もおり、実際に再検査は「セカンドオピニオン」として別の医療機関を受診している。何より、骨折が判明した桃田本人の落胆と動揺は半端ではなかったという。

 最も気になるのは東京五輪への影響だ。桃田は8日に手術を受け、1週間後に退院予定。所属先のNTT東日本によると「今は安静にし、容体は落ち着いています」と経過は順調だ。執刀医と接した関係者は「手術時間はそれほど長くなかったと聞いている。決して悲観する病状、症状ではない」と言い、金村医師も「東京五輪への(身体面の)影響はないと思う」ときっぱり太鼓判を押した。

 金メダル確実と言われる日本のエース。2016年リオ五輪は違法賭博問題で棒に振り、今回も試練が訪れた。「もうこれ以上、何も起こらないでほしい」。そんな桃田陣営の痛切な訴えは、オリンピックの神様に届くのだろうか。

【不安は試合勘】手術を受けて、桃田の東京五輪への道はどうなるのか。4月26日まで行われる五輪選考レースでは独走しており、すでに出場は当確。極端な話、残り全試合を欠場しても出場自体は問題はない。

 しかし、金メダルへ向けては現実的に懸念される点がいくつもある。まずは桃田が最も大事にする試合勘だ。復帰戦として予定された3月11日開幕の全英オープンは回避となり、全治3か月を踏まえると、復帰は5月16日開幕の、国・地域別対抗戦、男子トマス杯(デンマーク)あたりとなる。そうなると五輪本番までの実戦は3大会程度となり、やや心もとない。

 また、シード権の問題もある。現在、世界ランキング1位の桃田は7月7日付まで首位堅守なら第1シードが確定し、1次リーグを優位に運べる。ただ、欠場が長引けば逆転される可能性もあり、復帰時期は非常に重要になってくる。

 3か月も復帰が遅れることによる、精神的なダメージも心配な材料だ。マレーシアの事故では目の前で人が亡くなっているためPTSD(心的外傷後ストレス障害)の懸念もあっただけに、今後の回復具合が気になるところだ。