神奈川県座間市で起きた“頭部9遺体事件”で逮捕された白石隆浩容疑者(27)が、現場アパートを首つり専用部屋として借りていたことが分かった。自殺願望者の女性に「首つり部屋を持っている」とメッセージを送っていたという。同アパートは家賃1万9000円の格安ワンルーム。実家から8月22日に引っ越した白石容疑者は、9月になれば受けられる割引サービスを拒否してまで即入居にこだわった。その時点で殺人衝動はピークだったのか――。

 日本の犯罪史に残る凄惨事件の舞台は、小田急電鉄相武台前駅から徒歩10分のところにある築29年のアパートの一室。白石容疑者は2階に住んでいた。

 ロフト付きのワンルームで、家賃は格安の1万9000円プラス管理費3000円。駅近でありながらこの値段のワケは「過去にアパート内で不慮の事故があったため」(不動産関係者)だ。

 ここに白石容疑者は8月22日に越してきた。それまでの住まいは東京・東池袋のマンション。そして一時、座間市の実家を経て同アパートに住んだ。都心近くから一気に離れたことになる。

「白石容疑者は今年2月、女性を売春目的で茨城県内の風俗店に紹介したとして、職業安定法違反容疑で逮捕され、5月に懲役1年2月、執行猶予3年の有罪判決を受けた。直後、父親に『死にたい。生きている意味がない』とこぼしている。そこで心境の変化があったとしてもおかしくない」(捜査関係者)

 白石容疑者は今回のアパートを見つけると、一日でも早く入居できるよう大家に頼み込んだ。同物件は契約した月の家賃が無料になる「フリーレント」という割引サービスが使えるため、不動産会社は「9月に契約した方が得ですよ」と勧めたが、同容疑者はそれを拒否してまで、即入居にこだわった。

 そして、すぐさま猟奇事件を起こした。白石容疑者は8月下旬から約2か月間で男女9人をこの部屋で殺害。ほとんどが自殺願望者だった。

 同容疑者は「首吊り士」など複数のツイッターアカウントを所持し、自殺願望者に「一緒に死のう」などと持ちかけ、自らの部屋におびき寄せたとみられる。

 当局は現在、容疑者のスマートフォンを解析中。捜査関係者によると「ある女性に白石容疑者が『首つりするための部屋を借りた。ロフトがあるので、そこにヒモをくくりつければ(高さはあるから)失敗しない』という趣旨のメールを送っていたことがわかった」という。

 一方で、発見された遺体のうち少なくとも2体には、絞殺した時に現れる舌骨骨折や、口唇粘膜にいっ血点(毛細血管が破れてできる小出血)が見られる。医療関係者によれば「絞殺と首つり死は違う。容疑者は首つり場所を求めてきた者を、自らの手で絞殺した疑いが強い」という。実際は「首つり自殺部屋」ではなく、「絞殺部屋」だったわけだ。

 他方で、白石容疑者自身も父親に「死にたい」と自殺願望を口にしている。高校時代に自殺未遂をしたとの未確認情報もある。

 自殺願望者が自殺願望者を次々と手にかけるのは、矛盾しているようにも感じるが…。

 臨床心理士の矢幡洋氏は「彼の場合、自殺願望が殺人のベースになっています。次々と殺人を犯すことで、自分の人生がめちゃくちゃに壊れていく。それはいわば自傷行為に近く、快楽を感じる人もいます。過食症の人も、ずっと食べるのを我慢していたのに、それを破った途端、ものすごい勢いで食べてしまうことがある。これまでの努力が無駄になっていくのを快感に思う人もいるんです」と指摘する。

 白石容疑者は、殺人によって2つの快感を得ているといい「1つはストレス発散による快感。もう1つは自分で自分の人生を壊しにいく快感。この2つを得てしまったことで、殺人依存症のような状態になっているのでは」(矢幡氏)。

 モンスターの心の闇が次第に見えてきた――。