【泌尿器科医・高橋亮 シモの話】男性のタマ(睾丸)の痛みや不快感を来す病気として、精巣捻転症や精巣上体炎、精巣がんの話をしてまいりました。これらの病気は、インターネットで「睾丸 痛い」などのキーワードで検索をするとよく出てくる病気です。日本泌尿器科学会のホームページにもがん以外の前記2つの病名が最初に出てきます。

 ただ、実はタマが痛くなる病気の中では、今まで挙げた3つの病気は少数派であり、大多数は別のものです。その多数派、タマの痛みの半数以上を占めるのは…なんと「原因不明」。いろいろと検査をしてもタマが痛い原因が分からないことが半分もあるのです。

 これは、患者さんも原因が分からずにつらい思いをされますし、我々も原因不明の睾丸痛についての治療ガイドラインなどがないため、とても治療に難渋してしまいます。以前のコラムで睾丸痛の話は気が重いんですと書いたのはこのためです。

 タマの痛みについての悩みは世界共通なようで、外国の論文を検索すると、泌尿器科に来院する患者さんの約4%がタマの痛みを訴えて来院され、約50%が原因不明、アメリカでは年間10万人がタマの痛みに悩んでいる、年齢層は20~30代に多い、などの報告が出てきます。確かに私のクリニックを睾丸痛で受診される患者さんも比較的若い方が多い気がします。

 ただ、原因不明であり特効薬もないからといって、病院には行かずに放っておいて良いかというと、そういうわけにもいかず、念のため先の精巣捻転症や精巣上体炎ではないことを我々も確認しないといけません。

 原因不明の睾丸痛の治療に使われるのは、一般的な痛み止めはもちろん、てんかんや神経痛の薬、漢方薬・抗生物質など、効きそうな薬は何でも使います。どうしても痛みが良くならない場合には、ハリ治療を依頼したり、麻酔科(ペインクリニック)でブロック注射を打ってもらったりもします。なかなかスッキリ良くなるということはまれで、3か月以上かかることもしばしばです。

☆ たかはし・りょう 神奈川県出身。2003年日本医科大学卒業。日本泌尿器科学会指導医・専門医。日本医科大学付属病院嘱託医。ED、早漏、AGAなどをはじめ、前立腺がんなど泌尿器科にまつわる疾患全般を扱う動坂下泌尿器科クリニック(東京・文京区)院長。