5月19日は世界IBD(炎症性腸疾患)デー。IBDとは腸の粘膜に炎症が起き、腹痛や下痢などが繰り返される病気の総称。一般に潰瘍性大腸炎とクローン病を指し、前者は安倍晋三元首相(66)の辞任理由として知られ、モデルの高橋メアリージュン(33)らも罹患を公表している。

 札幌医科大学医学部の仲瀬裕志教授は「IBDは原因不明で根治させる方法は見つかっておらず、難病指定されています。いずれも腹痛という身近な症状が主なことから疾患だと気づかれにくく、〝見えない難病〟とも。病状により長期入院や手術、食事制限、トイレが心配で外出困難になるなど、日常生活に支障が出て、症状が出る活動期と治まる寛解期を繰り返すのも特徴です」と言う。

 腸内細菌のバランスが崩れることで起きるともされており、過度なストレスも一因になり得る。コロナ禍で病院に行きづらい今は、単なる腹痛と思って放置してしまいがちだが、下痢や血便などが繰り返されるようなら注意が必要といえよう。

 厚生労働省の衛生行政報告例によると、IBD国内患者は令和元年度末で推計17万人と、難病の中で最も患者数が多い。特に潰瘍性大腸炎は12万6603人で、昭和50年度の965人と比べると約130倍だ。

 医薬品会社のアッヴィがIBD患者と一般を対象に行った調査の結果では、IBDは最も患者数の多い難病ながら、一般の9割が詳細を認知しておらず、理解度の低さが浮き彫りになった。

「一般の56%が全く知らない、34・8%が聞いたことはあるがどんな病気かは全く知らないと回答。IBDという疾患の認知は1割以下でした」(アッヴィ広報)

 IBDの病歴40年という50代患者は「見た目からは病気とわからないので、食事制限やトイレの心配など、説明に困る場合も。まだまだIBD患者ということを隠している方も多いため、より認知されて当事者からも発信できる社会になれば…」と語る。

 受診控えによるコロナ以外の病気の見逃しが懸念される中、この機会にIBDを理解してみては?