ロシア軍の士気はもう下がりようがない? ウクライナに侵攻したロシア軍が各所で反撃に遭い、後退を余儀なくされている。数日での電撃戦を想定していたとみられるプーチン大統領は、完全に読みが外れた。戦況が長引けば、経済制裁の影響も出てきてロシア軍は干上がるとみられているが、一方で「長期戦はロシアに有利」との見方も出ている。その理由とは――。
ロシアとウクライナの停戦交渉が29日、トルコ・イスタンブールで行われ、ロシア側は信頼醸成措置として、首都キエフ周辺などでの軍事作戦を大幅に縮小すると表明した。ロシアが作戦縮小方針を表明したのは、ウクライナの抗戦で戦死者が増大、キエフ陥落の見通しが立たない状況に陥ったことが背景にある。
ただ、米ホワイトハウスのべディングフィールド広報部長はキエフ周辺での動きについて「撤退ではなく再配置だ」と指摘し、「ロシアの発表にだまされてはいけない」と戒めた。
いずれにせよ、ウクライナの反撃は強烈なものだった。ゼレンスキー大統領は28日、首都キエフ近郊のイルピンを奪回したと発表。ここ数日で、北東部のハリコフ州やスムイ州で反撃して複数の拠点を奪回、ロシア軍を撤退させている。ロシア軍は先月24日に北東南の3方向からウクライナに侵攻し、首都キエフにも十数キロのところまで迫ったが、ウクライナ軍の徹底抗戦に足止めを食らっている。
ウクライナは国民総動員令で出国が原則禁止された18~60歳の男性が、銃を手に取って戦いに参加し、祖国を守るために士気は高い。一方、ロシア側は捕虜となった兵士から「演習と聞いていたのに…」「だまされた」と訴える者が続出。また戦況悪化にキレた部下が上官を戦車でひき、両足にケガを負わせて病院送りにする“下克上”も起きているという。
「ロシア 語られない戦争 チェチェンゲリラ従軍記」の著書があるフリージャーナリストの常岡浩介氏は、現在のロシア軍の状況について「ガタガタだと思います」と、苦境に陥っていると分析するが、簡単には引き下がらないともいう。
「他の国の軍隊は負けると士気が下がるが、ソ連軍の流れをくむロシア軍は、いくらやられても下がらない。ロシア軍の性格から見ると、長く戦った方が有利になる」と指摘する。
ロシア軍の士気が低い傾向は、第2次世界大戦の際にも見てとれるという。
「西側の兵士が『自由のために戦う』『帰ったらいい生活が待っている』と理想に燃えていた。一方、ソ連には督戦隊という自軍を監視する部隊がいて、逃げるソ連兵がいたら後ろから撃ち殺した。ドイツ軍に投降すれば、捕虜交換でソ連に戻っても銃殺される。そういう絶望という環境の中で戦争に参加してきた歴史がある」(常岡氏)
今回のウクライナ侵攻でも、逃げ出そうものなら懲役刑が待ち受けているという。
西側諸国はロシアに対して経済制裁を科し、国際決済システムのSWIFTからの排除によって通貨ルーブルは暴落。ロシア経済の破綻は時間の問題とも言われる。普通に考えると、長期戦になればなるほどロシアは不利な状況に陥り、現場の士気も下がると思えるが、プーチン氏の下、恐怖政治が敷かれているロシア軍に対しては、その常識も通用しないという。
「とんでもない死者が出ても、経済的に不利になっても、どうしようもない状態で戦い続けるのはソ連(ロシア)の伝統ともいえる。欧米の分析でも長期戦になれば、ロシアが有利ともある。(現場で戦う)ロシア兵にとっていいことはないが、国家権力にとっては有利な状況で、プーチン大統領も何万人が犠牲になっても戦い続ける性格。最低で不幸な状況です」(常岡氏)
ウクライナ軍は勇猛果敢に戦い続けているが、どこまで士気を維持できるかは分からない。対するロシア軍はハナから士気は底を打っているため、上がってくる可能性があり、圧倒的な軍事力も擁する。弱小、へなちょこ説も流れているロシア軍だが、やはりタフな軍隊といえそうだ。












