熊本・秀学館高サッカー部の男性コーチが部員に暴行した問題で、さらなる波紋が広がっている。段原一詞監督は当初、過去の暴行を否定。選手による謝罪動画への関与も否定していたが、その後にウソだったことが発覚して騒動が拡大した。そんな中、危機管理の専門家は「サッカー部だけの問題ではない」と指摘。すでにネット上で同校の〝過去〟を掘り返されるなど、スポーツ名門校が築き上げてきたブランドは大ダメージを受けている。

 お粗末としか言いようがない初期対応だった。学校側はコーチの男性が部員に暴行を加える動画の存在を4月20日に把握。その後、選手11人が顔を出して実名で謝罪する動画が同22日に投稿されて騒動が拡大した。段原監督は同25日に「スッキリ」(日本テレビ系)に出演し「今回の暴行動画のようなシーンは見たことがありません」と過去の暴行を否定。謝罪動画の投稿についても事前に知らなかったと説明していた。

 しかし、学校側は5日に開いた会見で段原監督が謝罪動画の撮影にあたり、選手にマスクを外して名前を名乗るよう指示していたと公表。学校側は「(部員が)顔を出すのはリスクが高く止めるべきだった。学校が早くから対処していれば、子供たちを苦しめることはなかった」と対応の不備を認めた。さらに男性コーチによる暴力行為を24件確認したとことも明らかにした。

 段原監督の「隠蔽」と受け取られても仕方がない言動の裏側には、騒動をいち早く収束させたい思惑が透けて見える。だが、結果的に火に油を注ぐ形となり、世間の批判が集中した。リスクマネジメントを専門とする「エイレックス」の畑山純氏は「何か問題が起きた場合は事実を確認し、保護者や世間に『こういう問題がありました』と説明する必要があると思います。しかし、今回はそれを〝なかったこと〟にしようとした。そして余計に傷口を広げてしまいましたね」と解説する。

 また、畑山氏は一連の騒動は「サッカー部だけの問題ではないと思います。ネット上をざっと確認しただけでも『野球部は県外出身者ばかりだ』とか『吹奏楽部は大会と重なっていたのに甲子園(野球部の応援)を優先した』といったコメントが見受けられます。(以前は)美談になっていたかもしれないけど、実は違うみたいな感じになっているんです」と指摘した。

 今回の問題とは無関係の同校の過去を掘り返す動きも出ており〝二次被害〟が広がっているというわけだ。

 大人の事情が見え隠れする〝隠蔽行為〟に「完全にマイナスイメージがついてしまいましたね。教育というよりもどちらかというと学校の名前を上げる、つまりは生徒を集めること、利益を優先していると思われても仕方ないんじゃないでしょうか」と畑山氏。スポーツ名門校が受けるダメージは計り知れないものとなりそうだ。