ヨシトミJr.柴田陸樹「ジョッキーにはなれなかったけど、オートの世界で日本一になりたい」

2021年01月03日 17時43分

柴田陸樹候補生

 JRAの最年長ジョッキー・柴田善臣(54)の三男・柴田陸樹(24)が2020年6月にオートレース35期生の試験に合格。21年夏のデビューを目指して茨城県下妻市の筑波サーキット内にあるオートレース養成所で鍛錬を積んでいる。学生時代には騎手を目指していたが、体格の問題もあり断念。オートの世界に転身する身長175センチの〝大型オートレーサー〟の素顔に迫った。

 ホクトヘリオスやヤマニンゼファー…。個性的な馬を操り、いぶし銀のイメージが強い父の背中を見て育った三男は「ヨシトミの息子」と言われることにそれほど抵抗はない。

「うれしくはないけど、それがあるからこそ話題にしてもらえるのはありがたいです。僕は目立ちたがり屋なので早く有名になりたい」と屈託のない笑みを浮かべる。

 オートの世界へ足を踏み入れるまでは紆余曲折もあった。中学在学時は美浦の乗馬クラブで現在、JRAで活躍する木幡巧也(24)、藤田菜七子(23)、菊沢一樹(23)らとともにジョッキーを目指して奮闘していた。自然な流れでJRA競馬学校騎手課程を受けたが、1回目は技術面、2回目の受験時にはすでに身長が170センチを超えており、体格面で不合格。父と同じ道は諦めるしかなかった。

 志半ばで道を閉ざされた柴田の心を奪ったのがバイクの世界だった。中型二輪免許取得後すぐに夢中になり、父の紹介でKAWASAKIのチームに所属した。勝負師の遺伝子はしっかり受け継いでおり、ロードバイクの世界でメキメキと頭角を現していった。
 だが、かつて青木治親(44)や青山周平(36)もそうだったように「ロードの世界で食べていくのは簡単なことではない」。職業として考えた時、オートの世界が頭をよぎった。

 2回目で合格した35期ではバイク経験者の特例枠で合格した。9月に入所してから4か月がたち、これまでの人生でも一番と言えるほど濃密な時を過ごしている。

「思った以上にオートレースのバイクの操作が難しくて苦戦してますね。左回りをグルグル回ることに関しては何となくできると思っていたけど、ずっと同じラインを走ることなどシンプルだからこそ奥が深いと感じてます」

 養成所では実力順にA~Dにクラス分けされ、柴田は最上位のAに所属している。「ロードの実績があるので一番じゃないといけないというプレッシャーもあります。ただ、入所してから3回も落車して、そこで一番になっちゃってますね」と笑い飛ばす。

 訓練中の〝落車王〟は決してネガティブな面ばかりではない。どこまで攻めていけるのか限界を探るという点では避けて通れない道だ。「ロードの世界ではお金がかかるけど、ココは転んでもタダなので(笑い)。体が持つうちは攻めていきたい」と至って前向きに捉えている。

 11月の日本選手権で柴田とほぼ同じ体格の森且行(46)がSG初制覇を果たしたことで減量の大切さを痛感するとともに心の支えにもなっている。「やっとつかんだチャンスだし、自分も必死に頑張っていくしかない。ジョッキーにはなれなかったけど、オートの世界で日本一になりたい。一番は父のようにリーディングを取って、最終的には賞金王になりたい」

 競馬の世界では2世ジョッキーがブレークしている。柴田も木幡巧也、斎藤新(19)らとは今でも交流があり、対抗心を燃やしている。「走る世界は違うけど、いつの日か互いに一番になれたら最高ですね。父は自分が迷っている時にいつも背中を押してくれたし、離れて生活してみて、とてつもなく大きい存在だと感じてます」

 果たして派手なスピードスターになるのか、父と同じくいぶし銀として存在感を示すのか。21年6月のデビュー節では美浦から多くの応援団が駆けつける初陣となりそうだ。

【先輩レーサー&競馬界からエール】

 青木治親(オートレース選手)=ウエルカム、オートレース。こっちにきてくれてすごくうれしい。オートレーサーとして一生懸命頑張って、いつか一緒に戦えることが楽しみです。同じバイクということだけで、ロードレースとは全然扱い方が違うので、オートレースというものを養成期間中にしっかり勉強してほしい。自分もロードレースからオートレースに変わり、すごく苦労した。ロードレースで培ったものが時には邪魔になることもあるので、基本的に養成所でみんなと一緒にいろんなことを感じてほしい。

 佐藤摩弥(オートレース選手)=同期を引っ張っていく存在になると思うので、これまで経験してきたことを生かして男子だけじゃなく、8人いる女子にもたくさんのことを教えてあげてほしいです。

 藤田菜七子(JRA騎手)=中学生の時、ジョッキーを目指して乗馬苑(美浦トレセン内施設)でずっと一緒に馬に乗っていました。すごく明るい性格で、その明るさに何度も救われましたね。「一緒に頑張ろう」と言って励ましてくれたのが印象に残っています。本人は覚えていないかもしれませんが(笑い)。新しい道にチャレンジしていくというのはすごいこと。これからもお互いに頑張っていければいいですね。

 木幡巧也(JRA騎手)=父がジョッキーで、しかも男3人兄弟とまったく同じ環境でしたからね。すごく明るいヤツで、子供のころから一緒に遊んだり、ご飯を食べたり…兄弟のように過ごしてきたので頑張ってほしいですね。競馬学校を不合格になったり苦労している姿を見ているだけに、今回(オート養成所に)受かったのはうれしかったです。それぞれの世界でお互いにしっかりと今の気持ちを忘れずに努力して、励まし合えるように頑張っていきたいです。いつか応援に行ける機会があればいいですね。

☆しばた・りっき=1996年8月27日生まれ。茨城県出身。JRAの現役最年長騎手・柴田善臣の三男。中学卒業後、JRAの騎手を目指すが2回不合格になり、バイクのロードレースの世界へ参戦。2015年の筑波ロードレース選手権ST600第2戦で優勝し、年間2位の成績を残す。趣味は釣り、バイクなど。身長175センチ。血液型=A