10日に閉幕したボートレースまるがめのGⅡ「第11回レディースオールスター」はチルト3度で6コースまくりを連発した田上凛(大阪)が大旋風を巻き起こした。最後は優勝戦1号艇の西橋奈未(福井)が田上のまくりを受け止めてイン先マイV! ボートレースファン歴48年の元天才ジョッキー田原成貴(67)は、この劇的な結末をどう見たのか?

【水面の残像】本当にいいものを見せてもらった。チルト3度で大会を盛り上げた田上選手もアッパレだが、私は優勝した西橋選手の「逆境をプラスに変える力」にしびれた。

 優勝戦をライブで見て思わず1Mで「おー!」と声をあげた。田上選手がスリットで大きくのぞいた時、私は99%まくったと思った。絞って1号艇を沈めるシーンがハッキリと脳裏に浮かんだのだ。しかし、1M手前で田上選手がわずかにレバーを落とし、まくり切れない態勢になった時、今度は別の絵が浮かんだ。西橋選手が激しく抵抗し、両者が飛んでいくシーンだ。

 長年ボートレースファンをやってきて何度も見てきた。栄冠に王手をかけた1号艇が玉砕覚悟で抵抗する。結果は両者共倒れ。そんなシーンが頭をよぎった次の瞬間、別の現実が起きていた。西橋選手は無茶な抵抗をしなかった。きっちりとターンマークを回り、まくりを受け止めて逃げ切ったのだ。もちろんエンジンが出ていたこともあるだろう。しかし、私は西橋選手の「堅実さ」がもたらした勝利だと思っている。

 その裏にあるのが昨年の悲劇だ。昨年3月、今回と同じまるがめで頭蓋骨骨折の大ケガを負った。私も勝負の世界に身を置き、ケガをした経験があるから分かる。事故が起きた同じ水面。当然、恐怖もあったはずだ。だからこそ今大会は「堅実さ」を徹底したのではないか。ケガで後ろ向きになるのではなく、逆にプラスに変えたのだ。恐怖を払拭すべく、慌てず焦らずにターンをする。その意識があの1Mで表れたのではないか。私にはそう思えて仕方ない。

 くさい言い方になるが、ボートレースの神様がいるとすれば、あえて試練を与えたのだと思う。そして彼女は自らの力で試練を〝布石〟に変え、優勝を勝ち取った。こんな感動的なストーリーを見せてくれたボートレースに「ファンタスティック」と言いたい。

まくりを受け止めて勝った西橋奈未
まくりを受け止めて勝った西橋奈未