闘病中の〝燃える闘魂〟アントニオ猪木氏(79)が、3年越しの約束を果たした。弟子の一人で〝元暴走王〟の小川直也氏(54)を呼び出し、再会が実現。同じく弟子で、NHKで猪木氏の闘病ドキュメンタリー番組を手がけた「KENSO(ケンゾー)」こと鈴木健三氏(47)も加わって、闘魂トークを展開した。燃える闘魂が既にプロレス界を離れた〝不肖の弟子〟と交わした会話とは――。

 猪木氏は難病「全身性トランスサイレチンアミロイドーシス」で、昨年から闘病を続けている。猪木氏が病名を公表したのが、健三氏が手がけた猪木氏の闘病ドキュメンタリー番組「燃える闘魂 ラストスタンド~アントニオ猪木 病床からのメッセージ~」で、NHKで放送されて大きな反響を呼んだ。

 そうした状況で、猪木氏は健三氏を通じて小川氏を呼び出した。テレビカメラもユーチューブの撮影もない、プライベートの面会だったことで、小川氏は家族を同伴した上で、師匠と久しぶりの面会を果たすことになった。

 小川氏は「会長(猪木氏)、お元気そうで何よりです」と花束を渡すと、猪木氏も「3回お迎えに来たんだけど、迎えてくれないんだよ、フフフッ…」とブラックなアントンジョークで切り返した。さらに「もうちょっとしたらね、なんとかつかまって立って。この間まで(体調が)良かったんだけど、また菌が入っちゃって。治んないとは思うけれど、少しずつ体力も戻りつつあるんで。多少はね」と自身の病状を打ち明けた。

 小川氏はモンゴルの帽子も師匠にプレゼント。猪木氏は破顔一笑で、モンゴル帽を自身に引き寄せた。1997年にバルセロナ五輪柔道銀メダルからプロレスラーに転身した小川氏は、猪木氏とともに世界各地で武者修行を行った。その流れで中国の内モンゴル自治区を訪れており「現地では羊肉しか食べられなくて。やっと餃子を食べる段階になって、会長に『やっと餃子が食べられますね』って言ったら、会長は『め~~~っ』って(笑い)」と、なんだかよくわからないエピソードも披露した。

 続けて「(内モンゴル自治区で)道なき道を4時間くらい車で走ったら、村の入り口みたいなところでヤバそうな老人が立っていて。『この酒を飲め』と言われたんですよ。馬のエキスが入ったお酒だというんですが、僕が『うわーっ、こんなの飲むの?』と思ったら、会長は迷わず飲まれて。会長がおいしそうに飲まれていたんで、僕も飲んだらすげえ、まずかった…。会長はやっぱり、すげーなと」。これを聞いた猪木氏はすかさず「迷わずいけよって、なあ、フフフッ…」と絶妙な相づちを打った。

 ただ猪木氏が小川氏を呼んだ理由は、弟子と昔話をするためだけではなかった。師弟は2020年12月にユーチューブで対談。小川氏によればその際、小川道場に飾る猪木氏の詩「道」の垂れ幕にサインを入れてもらう約束をしていたという。2年半前の段階では字を書くことも難しい状況だったというが、猪木氏は自らペンを取って垂れ幕にしっかりとした筆遣いで「闘魂」と記し、自身のサインを入れたのだ。

 加えて猪木氏は「頭は生き生きとしているのに、体力がついてこなくて。でも、次はみんなでステーキにいきましょう。みんなですてーき(ステキ?)に、ね」。アントンジョークを交えながら、次回までにステーキを食べられるくらいに体力を戻すと約束した。

 これに小川氏は感激。猪木氏から「天下をとれる器」とされ、手塩にかけて育てられたが、暴走王はプロレス界のトップに立つことなく、18年6月にプロレス・格闘技を引退した。いわば〝不肖の弟子〟にもかかわらず、約束を果たしてくれたことで、思わず涙目となった。

 わずかの時間ではあったが、小川氏は「ケンゾーには橋渡ししてくれて、本当にありがとうと言いたい。今から次のステーキが楽しみだ、ステキだよね」と明大鉄壁の上下関係を守った後輩に感謝し、師匠との再会を早くも心待ちにしている。

☆…鈴木健三氏が手がけた「燃える闘魂 ラストスタンド~アントニオ猪木 病床からのメッセージ~」は、NHK総合で15日午前2時から45分間番組として再放送される。また、18日のNHK総合「3分ドキュメンタリー」(午後6時5分~)でも同番組が取り上げられる予定だ。