【AI時代の歩き方】コロナ禍でも活躍「創薬」「密回避」「非接触」分野の未来予想図

2021年11月07日 10時00分

グーグルによる感染予測
グーグルによる感染予測

 人類と新型コロナウイルス感染症との戦いが始まって間もなく2年。この世界的な危機に対して人類はどのように対抗してきたのでしょうか。状況が落ち着きつつある今、改めてコロナ禍におけるAIの活躍をご紹介するとともに、今後AIが切り開く明るい未来について述べたいと思います。

【コロナ禍におけるAI】

 AIは様々な可能性を秘めている技術とはいえ、残念ながらウイルス自体をやっつけることはできません。しかしコロナ禍においても数多くのAIが開発されています。今回はコロナ禍で特に重要な3つのキーワード「創薬」「密回避」「非接触」の各分野で活躍するAIをご紹介しましょう。

 創薬に関するAIとして外せないのは「AlphaGo(アルファ碁)」で有名なDeepMind社が開発した「AlphaFold2(アルファフォールド2)」でしょう。これは2020年に登場した創薬分野における革新的なAIです。薬の開発で重要なたんぱく質の構造を明らかにする作業は、通常実験を通して行われ非常に長い期間が必要です。AlphaFold2はこの期間を劇的に短くし、業界に衝撃を与えました。

 我々が日々気を付けている密の回避に関しても活用されているAIがあります。株式会社NTTドコモはカメラに映った人数や密度などをリアルタイムに測定可能な「混雑状況測定AI」を提供しています。混雑状況を把握することは密を回避し、日常生活を安心安全に過ごす上でとても重要です。加えて、今後イベント等を主催する人にとっても必須の情報となるに違いありません。

 密の回避に加えて感染拡大を抑える重要なポイントである非接触に関しては、人に接客してもらうのではなくAIに接客してもらおう、というスタイルが広がりを見せています。ロボットによる接客はすでに大手すしチェーン等で導入が進んでいます。飲食店以外では最先端のロボットが働く「変なホテル」が有名でしょう。変なホテル自体はコロナ禍で始まったものではありませんが、コロナ禍をきっかけにロボットによる接客はさらなる広がりを見せると考えられます。

 コロナ禍におけるAIとして、最後にグーグルの感染者数予測をご紹介します。このAIが出した予測結果は今もウェブで見ることができます。未来の感染者数がわかれば医療機関や公的機関などは今後どのような対応をすべきか的確に検討することができます。また、私たち自身もこの予測を見ておくことによって、今後取るべき行動を的確に判断できるようになるでしょう。あくまで予測ですので必ず当たるというものではありませんが、こういったものが提供されていること自体は知っておいて損はないですよね。

【AIが描く明るい未来予想図】

 最初にご紹介した革新的なAI「AlphaFold2」は現在もさらなる性能向上のための研究が継続されています。これまで長期間の実験を行うことが普通だった創薬において、このAIを活用することが当たり前になれば創薬の速度は一気に加速するでしょう。創薬の速度向上に加え、モデルナが行っている変異株の予測もコロナ禍で集まったデータを用いることで精度の向上が期待できます。もしまたコロナ禍のような事態になったとしても、その時には変異株の的確な予測と創薬スピードの向上により、現在のような大災害にはならないのではないかと期待せざるを得ません。

 また、混雑状況を把握するために活用されているAIについてもご紹介しましたが、将来的には現在の混雑状況だけでなく未来の混雑状況を高い精度で判定することができるようになるはずです。コロナ禍において私たちの生活は非常に制限されてきましたが、人流を的確に予測することができるようになればたとえ同様の状況になったとしても我々の日常は脅かされないかもしれません。

 ロボット接客をご紹介した非接触については、コロナ禍にかかわらず人手不足などの課題から今後も加速するものと思われます。非接触であっても人とのつながりを感じ取れるようなものや、あるいはAI自身に人のぬくもりを感じられるような、ロボット特有の冷たさのない非接触が実現されることでしょう。
 コロナ禍で活躍しているAIは今後も我々の生活をより良くするため、そして来る未来のために飛躍的に進化し続けているのです。

☆おおにし・かなこ 愛媛県出身。2012年お茶の水女子大学大学院博士後期課程修了。博士(理学)。同年、NTTドコモ入社。16年から2年間、情報通信研究機構に出向。一貫して雑談対話システムの研究開発に従事。20年から大手IT企業でAIの導入や設計をリード。AIに関する講演や執筆、監修等も行う。著書に「いちばんやさしいAI<人工知能>超入門」「超実践!AI人材になる本」。

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