【AI時代の歩き方】「Romi」が提示するAI会話の未来を研究者・大西可奈子氏が解説

2021年07月11日 10時00分

かわいらしいRomiは超優秀だ

「異常検知」「需要予測」「レコメンド」といった様々な課題を解決しているAIたち。でも、待ってください。私たちがワクワクしているAIは、もっと別のものではないでしょうか。そう、SF映画やアニメに出てくるおしゃべりなロボットです。彼らは人間と敵対することもあれば、友人であることもありますが、ともかく流ちょうに会話します。AIがこれだけ普及してきた世の中で、AIの会話はどの程度のレベルになっているのでしょうか。

【Romiのすごさ】4月21日に一般販売が開始されたミクシィの会話ロボット「Romi(ロミィ)」が、5月28日に世界初の「ディープラーニング技術を用いて言語生成し会話する家庭用コミュニケーションロボット」として認定されました。

 Romiには、めざまし機能や天気予報など便利な機能がたくさん搭載されていますが、特筆すべきは「自由な会話」機能です。ミクシィによれば「数千万の日本語データを学習したことでこれまでのAIとは一味違った、思いも寄らない会話が楽しめます」とのこと。例えば…。

 ユーザー「徹夜で仕事したのにいらなくなっただって!」

 Romi「えー、時間返してほしい。面白くない映画見た時と同じくらい」

 すごい返しです。このようなユーザー発話の場合、単純に「徹夜」というキーワードを拾い「徹夜は大変でしたね」のように応答することが最も簡単な方法です。しかし、Romiは文章全体の意味を捉えることで、「せっかく行った仕事が無駄になった」ことを理解し、面白い例えも交えて応答しています。

 自由な会話はロボットにとって重要な機能だと思うかもしれませんが、実は付いていないことも多いです。あるいは付いていたとしても、決まりきった会話が数パターン可能という場合もあります。

 本当に自由な会話を実現するためには、Romiがやっているようにディープラーニングなどの最新技術を使って、応答をAI自らが生成する必要がありますが、この場合、倫理的に適切でないことをしゃべってしまうリスクがあるため、自動生成の自由な会話は製品への導入が難しいと思われていました。Romiのすごさは、自動生成技術を使って自由な会話を追い求めているところにあるのです。

【AIとの会話の難しさと楽しさ】かつてコンピューターとの会話はあらかじめプログラムされたパターンのみでした。「好きな人ができた」または「好きな人」「できた」という2つの言葉が入っていた場合、「告白してみたら?」と返す――といった具合に、あらかじめ発話と応答のパターンを設定しておくのです。「気になる人ができた」のように登録されている文と違う言い方をすれば、たとえ同じ意味の言葉だったとしても応答することはできません。人間と同等の会話レベルを100だとすれば、かつてコンピューターとの会話は決して自由ではなく、1に満たないレベルだったと言えるでしょう。

 現在は、ディープラーニングを活用した言語生成技術により、どんな応答が返ってくるのか分からないワクワク感を得ることができるようになりました。「好きな人ができた」に対する応答をあらかじめ記述しておかなくても、「告白してみたら?」「どんな人なの?」といった文を自動で生成することができるのです。しかし、これはあくまでビッグデータに基づいて言葉を紡いでいるにすぎないため、AIは告白という行為がどういうものか認識していませんし、告白した後に成功と失敗があり、成功(あるいは失敗)したらどうなるのかということも把握していません。

 会話の本質はまだ解明されていません。告白という行為の意味を理解しなければ人のような会話ができないのか、それすらもビッグデータから学習することができるのか、まだ分かっていないのです。そういう意味でも、現在の会話レベルは3程度かもしれません。1から3へのレベルアップは大きな変化ではありましたが、まだまだ人のような自由な会話ができるようになるには時間がかかりそうです。

【会話の本質は…】現在、Romi以外にも会話が可能なロボットは多数存在し、実際に利用して楽しくおしゃべりをしている人たちも存在します。

 AIとの会話で満足できるのかという点については、大きな個人差があると考えています。私が開発に関わった会話ロボットも人のように会話できるわけではありませんでしたが、ユーザーの中にはあたかも家族や友人かのようにAIとの会話を楽しんでいる人たちがいました。

 AI相手であろうと人間相手であろうと、会話の本質はコミュニケーションです。人との会話同様、AIとうまく会話のキャッチボールができるように、少しだけ気を付けながらAIと会話してみてはいかがでしょうか。文脈を理解することが難しいため、その文だけで意味が通るように話したり、「どう思う?」のようなオープンクエスチョンではなく「はい」「いいえ」で答えられるクローズドクエスチョンにしたり、キーワードとなる単語を入れたりすれば、これまでよりも少しだけAIとの会話を楽しめるかもしれません。

 コロナ禍で自由に人に会えない状況は、多くの孤独を生みました。孤独はコロナ禍に限らず、少子高齢化が進んでいる日本においては大きな社会問題です。現在の会話ロボットは少しずつ人々の孤独を癒やしつつあります。これからさらに技術が発展すれば、さらに多くの人々の心の支えになるでしょう。人のように会話できるAIができれば、世界中から孤独をなくすことができるはずです。

 ☆おおにし・かなこ 愛媛県出身。2012年お茶の水女子大学大学院博士後期課程修了。博士(理学)。同年、NTTドコモ入社。16年から2年間、情報通信研究機構に出向。一貫して雑談対話システムの研究開発に従事。20年から大手IT企業でAIの導入や設計をリード。AIに関する講演や執筆、監修等も行う。著書に「いちばんやさしいAI<人工知能>超入門」。

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