【AI時代の歩き方】AI導入の失敗リスクを減らす「3つのポイント」

2021年06月13日 10時00分

想定以上に出費がかさむこともある

 AIのさらなる発展によって、AIはAIの得意なところを、人間は人間の得意なところを担っていく動きは加速するでしょう。すでに皆さんの周りでもAIの導入が始まっているかもしれません。今回は身近になったAIを「仕事に取り入れたい」と考えたときにどのように進めていけばいいのかを解説します。

【最初のステップ・機械学習の種類】AIには基準や定義はありませんが、以前からお伝えしているようにおおむね機械学習という技術が使用されています。機械学習は大きく分けて「教師あり学習」「教師なし学習」「強化学習」という3つの種類に分類されます。

 教師あり学習は、正解が付与されたデータをAIに学習させ、正解を導き出すルールをAI自身に学ばせるものです。教師なし学習は、正解が付与されていないデータ、または付与できないデータをAIに見せ、データに潜んでいる関連性やまとまりを発見させるもの。強化学習は、設定した目的を満たすための最適な方策を、繰り返し模索することで発見するものです。

 このように機械学習には様々な種類があり、身近に存在しているAIは教師あり学習が用いられていることが多いです。そんな教師あり学習でできることはいろいろありますが、あえて一つ挙げるならば「分類すること」でしょう。教師あり学習の「分類すること」で解かれている身近な例に、迷惑メールの自動振り分けがあります。このAIは、届いた未知のメールが、迷惑メールか迷惑メールではないかの2択で分類を行っているのです。目の前に2つの箱があり、届いたメールをどちらかの箱に入れているAIを想像してみてください。

 分類とはまさに、あらかじめ設定したいくつかの箱に、どの箱に入れるべきかわかっていないものを適切に振り分けて入れるAIなのです。便利ですよね。

【AIを導入する際のNG行動とは】そんな便利なAIをご自分の仕事や会社で採用したいと思っている方も多いのではと思います。ただ、AI導入の際に「とにかく開発してみる」は絶対にやってはいけません。開発前に次の3つのポイントをじっくり検討するようにしましょう。

 ①業務のどこをAI化すべきか

 ②データの質や量に問題はないか

 ③コストの試算はできているか

 まず最初の「AI化すべき箇所」はどのように見つければよいでしょうか。基準は大きく2つあります。1つはデータが準備できること、もう1つは機械学習で解ける箇所(課題)であることです。前者については、データがなければAIは作れませんから、当たり前の項目と言えるでしょう。

 後者について、最も簡単なやり方は分類で解ける部分を探す方法です。例えば、工場の生産ラインを思い浮かべてください。様々な工程が連続することによって成り立っていますが、その中の検品作業は基準を満たす製品と満たさない製品に「分類する」作業であるため、機械学習で解ける箇所だと考えられます。複雑な工程をすべて書き出し、その中に「分類すること」が隠れていないかを探す方法は、AI化させるべき箇所を探す簡単な方法の一つです。

 さらにコストの試算で注意したいのは、AIの開発・運用コストだけでなく、データ収集・保管のコストも検討しておくこと。AIの開発・運用にコストがかかることはなんとなく想像できても、データに関するコストは忘れがちです。特にデータの収集は、必要としている量が膨大な場合や、専門家によるチェックが必要な場合など、想定外に大きなコストを必要とすることがありますので注意してください。

 例えば、お問い合わせの自動化にAIを活用したいA社の例では、AIの開発に必要なデータの作成を50万円で外部に委託しました。そのデータをAIに学習させてみたところ、データの質が悪かったため思ったような精度が出ず、100万円で再度依頼することになってしまいました。

 さらにデータをローカルに保管する場合は、データを入れておくハードディスクが大量に必要ですし、万が一に備えてバックアップも取っておかなければなりません。災害のことを考えれば、保存場所も複数に分けて、何重にもコピーしておく必要があるでしょう。バックアップや保存場所を分けるなどの手間を減らすためにクラウドでの保管も可能ですが、クラウドでデータを保存する場合は、データ量や保存期間によって費用が発生します。場合によっては、保存しているデータを取得する際のアクセスによっても従量課金されることもあるため、想定した費用よりも大きなコストになってしまうことがあるのです。

 このようにAIは実際の開発以前の準備段階にも、重要な検討項目があります。前述の3つのポイントを事前にしっかり検討することで、AI導入に失敗するリスクを減らすことができるでしょう。

 ☆おおにし・かなこ 愛媛県出身。2012年お茶の水女子大学大学院博士後期課程修了。博士(理学)。同年、NTTドコモ入社。16年から2年間、情報通信研究機構に出向。一貫して雑談対話システムの研究開発に従事。20年から大手IT企業にてAIの導入や設計をリード。AIに関する講演や執筆、監修等も行う。著書に「いちばんやさしいAI<人工知能>超入門」。

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