格闘魂が勝つか、それとも…。ボクシング女子フライ級準決勝(4日、両国国技館)で、金メダルを目指した並木月海(22=自衛隊)がストイカジェリャスコバ・クラステバ(ブルガリア)に判定負け。3位決定戦は行われないため、銅メダルとなった。試合後はパリ五輪へ複雑な胸中をのぞかせたが、幼稚園年中から極真空手を始めた〝格闘サイボーグ〟が黙って引き下がるとは思えない。とはいえ、並木にはもう一つの「夢」もある。気になる今後に迫った。

 俊敏なフットワークが身上。153センチと小柄だが、この日もリーチの差をスピードで埋め、積極的に攻めていった。しかし、相手の的確なパンチに最後まで苦しみ、惜しくも決勝進出はならなかった。

 前日の女子フェザー級では、仲のいい入江聖奈(日体大)が金メダルを獲得。是が非でも続きたかったが、夢破れてリングで涙を見せた。試合後、3年後のパリ五輪について「正直なところ目指すつもりはなかった」と明かしたが「やっぱり悔しい気持ちが強くて。あと3年、もっと努力したら金を取れるのかなと思うので。落ち着いて、自分のボクシングとも、もう一回話し合って考えていきたいなと思います」と再挑戦に含みを持たせた。

 これまでの格闘人生を考えれば、簡単に引退の道を選ぶとは思えない。4人きょうだいの末っ子で、幼稚園年中で極真空手に入門。人生初黒星をつけられたのが幼なじみの〝キック界の神童〟那須川天心だった。

 小学4年からはキックボクシングの道に進み、那須川とは道場で何度も対決している。中学に入学すると、一度は「普通の女の子に戻りたい」とどこかで聞いたフレーズを口にして格闘技をやめたが、たった1年で「女子学生の生活は物足りない」と戻って来た。今回、仮にやめたとしても、那須川の活躍に刺激されて全身に流れる〝格闘の血〟が騒ぐことは容易に想像がつく。

 しかし、その一方で並木にはずっと昔から抱く「夢」がある。大会前、本紙にこんな人生設計を明かしていた。

「私は小さいころからずーっとお嫁さんになるのが夢でした。格闘技だけをやってきましたが、そろそろ落ち着いて、お母さんになってみたいな…という理想はありますね」

 幼稚園のころの将来の夢は「ケーキ屋さん」「お花屋さん」だったが、小学生からは一貫して「お嫁さん」だという。

 今回の敗戦後、並木は明らかに悔しそうな表情だった。再び戦いの場に身を投じるのか、それとももう一つの夢に向かうのか。今後に注目だ。