映画「砂の器」や米ドラマ「将軍 SHOGUN」などで知られる女優の島田陽子さんが25日、都内の病院で死去した。69歳だった。関係者によると、かねて大腸がんを患い、闘病生活を送っていたという。島田さんは、女優として数々の名作に出演したが、私生活では不倫スキャンダルや金銭トラブルに見舞われるなど波乱続きだった。だが、そこから浮かび上がるのは、チャーミングなエピソードの数々。その知られざる逸話をお届けする――。

 1970年にドラマ「おさな妻」で女優デビューした島田さんは、翌年に最高視聴率42・7%を記録したドラマ「続・氷点」のヒロインを演じ、一躍人気女優になった。

「3歳からクラシックバレエを始め、高校時代はバレリーナを目指していました。ところが、身長が170センチもあったので、男性バレリーナが担げない。諦めたところで、人の前で演技するのはどうか、と女優になるきっかけになったんです」と振り返るのは島田さんをよく知る芸能関係者だ。

 その後は破竹の勢いで名女優としての階段を駆け上がっていく。映画「砂の器」(74年)、「犬神家の一族」(76年)、ドラマ「白い巨塔」(78~79年)など出演作は名作ばかり。さらに、国際派女優としての評価を決定づけたのが80年の米ドラマ「将軍 SHOGUN」への出演だ。

 当時のドラマスタッフがこう明かす。

「当初、ジュディ・オングさんをキャスティングしていたんですが、79年2月に『魅せられて』を発売したところ、大ヒットしてしまった。当然、年末には日本レコード大賞やNHK紅白歌合戦への出場が視野に入ってしまう。でも『将軍』の撮影は6~12月にがっつり入っていた。結局、ジュディさんは降板し、急きょキャスティングされたのが島田さんだったんです」 

 三船敏郎さんやフランキー堺さんも出演した同ドラマは日米で話題となり、ゴールデン・グローブ賞ドラマ作品賞を受賞。同女優賞を受賞した島田さんは国際派女優の仲間入りを果たした。その後の活躍も目覚ましかったが、女優としての“島田伝説”にはこんなエピソードがある。

「うちが抱える若手女優をTBSのドラマオーディションに参加させたものの、プロデューサーから『使いものにならない』と一蹴されたんですよ。そこで親交のあった島田さんの自宅に1週間泊まり込みに行かせ、再びそのプロデューサーのところに行かせたら一発OK。そのプロデューサーは『何をやらせたの!?』とビックリしていました。それだけ島田さんには、演技のセオリーが出来上がっていたんです」(芸能プロ関係者)

 一方、私生活ではスキャンダルに事欠かなかった。80年代には内田裕也さんとの不倫が報じられたばかりか、数々の金銭トラブルでも世間を騒がせた。94年には自宅のローン未払い問題が発覚し、その翌年には愛車の修理費などの未払いが表面化。金銭的な目的で、ヘアヌード写真集やセクシービデオも発売し、騒動になったのは記憶に新しい。

「良くも悪くも人がいいんですよ。だから付け込まれてしまう。世に表面化していない金銭トラブルはもっといっぱいある」とは前出の芸能関係者。

 だが、お金がないというイメージが先行し、こんなことも…。

「島田さんの家の近くで打ち合わせしようとしたところ、適当なところがファミレスしかない。そしたら、週刊誌にたまたま写真撮られて『島田は金がないからファミレスでご飯食べてる』と報じられてしまった。ブチギレた島田さんは『今度から渋谷のセルリアンタワーで会いますからね!』となった(笑い)」(同関係者)

 それでも、褒められることにはめっぽう弱い。

「ある日、米女優のニコール・キッドマンに雰囲気が似ていると言ったところ、本人は『あなた、わかってるわね。ハリウッドでもそう言われたのよ』とまんざらでもない様子でしたね。そんなピュアなところが憎めない一面でもありました」(同関係者)

 清濁併せ持つ女優は、日本の芸能史に確かな足跡を残した。