今、世間をにぎわせている「トー横キッズ」とは何なのか。サラリーマン御用達のビジネスホテルとは関係がない。新宿・歌舞伎町のかつてコマ劇があった場所に建つ新宿東宝ビル周辺にいる少年少女が「トー横キッズ」と呼ばれているのだ。最近も殺人事件との関連で名前が出るなど何やら物騒な感じ。欲望渦巻くこの街で何が起きているのか。

 トー横キッズが直近で話題になったのは11月27日に歌舞伎町のビル屋上で氏家彰さんが亡くなった事件だった。傷害致死の疑いで逮捕されたのは関口寿喜容疑者(26)と18歳の少年2人。彼らが「トー横キッズ」だと報じられていた。

 トー横キッズとは新宿東宝ビル周辺にたむろしている若者のことだとされる。実際に訪れてみると、確かに同ビル周辺にある広場の一角には夕方から数人の少年少女が座り込んでいた。彼らがトー横キッズなのか。声を掛けると、「トー横キッズはもともとは、こっちじゃなくて反対側の通りにたむろしていた人たちのことを言うんですよ」と教えてくれた。

 こう話す20代男性は広場に集まる少年少女たちの面倒を見ているという。この男性によると2、3年前にSNSで自撮りを趣味にしていた人たちが広場とは反対側の路地に集まりだしたとのことだ。

「『自撮り界隈(かいわい)』と呼ばれ、女の子が集まって、人が増えたんです。それが『トー横界隈』となりました。そこには『トー横四天王』がいて、女の子に悪さをしていました。それとは別に広場に集まる『広場界隈』というのもありました」(前出の20代男性)

 10月に児童買春・ポルノ禁止法違反(児童ポルノ盗撮製造)などの疑いで逮捕された21歳の男がトー横四天王の1人だったという。トー横に集まる女子高生を毒牙にかけたとされる。

 こうした事件もあり、最近はトー横界隈から広場界隈に人が流れる傾向にあった。厳密には広場界隈はトー横キッズのエリアではないというが、今はビル周辺に集まる少年少女のことをマスコミがトー横キッズと総称しているというわけだ。

「広場界隈はトー横界隈に似てはいます。『トー横』に興味やあこがれを持ってやって来たという人もいます。また、親の暴力などが理由で家に帰れない子など家庭環境が複雑な子が集まって、傷をなめ合っているという側面もあります」(前同)

 SNS事情に詳しい関係者は「SNSには“病み垢”という家庭や学校、友人関係などで悩みを抱えている人がグチったりするアカウントがあります。その病み垢でここ1年ほど、『親が嫌いだからトー横行く』などの書き込みが見られるようになりました」と明かす。行き場のない子たちにとってトー横が居場所になっているのかもしれない。

 昨今の報道ではトー横周辺が犯罪の温床のように伝えられている。前出の20代男性は「否定はしません。施設から飛び出してきてお金がないのでパパ活したり、モノを盗んだりということもないわけではない。犯罪をしないと生きていけない子もいる。だから私も含めて大人が面倒を見ています。オゴったりして犯罪をしなくていいようにしようと。居場所がない子に寄り添って、食べられない子に食べさせてと協力し合っています」と話した。

 歌舞伎町で約20年働いている男性は「若い子たちがコンビニ前でたむろしているみたいな感じで、別に危険でもないし悪いことをしているわけでもない。居場所を求めて来ているのでしょうが、都か区など行政でサポートできないものでしょうか」と心配げに見つめていた。

 夏場には40~50人が広場に集まったという。警察が取り締まりを強化しているともささやかれるが、ただ追い出しただけでは次なる“トー横”が生まれるだけだろう。