安藤美姫 指導者転身に意欲「苦しんだ私だからコーチングできる」

2019年09月13日 22時45分

本紙のインタビューに応じた安藤美姫は「そろそろ、コーチの道を歩みたい」

 元フィギュアスケート女子日本代表で、世界選手権を2度制した女子初の4回転ジャンパー・安藤美姫(31)が13日、東京・渋谷のスペースJで開かれた「J SPORTS フィギュアスケートアカデミー」で、表現力やコーチングに関する講演会を行い、本紙の独占インタビューに応じた。

 安藤は「リンクで滑るのではなく、コーチとして言葉だけで伝える機会はこれまでなかった。事前に内容をノートにまとめるなどして、わかりやすく伝えられるように気をつけた。皆さんが笑顔で帰ってくださったのが、とてもうれしかった」と感想を述べた。

 9歳で門奈裕子コーチのスケート教室に入会。浅田姉妹や恩田美栄らとともに教えを受けたが、同時期に最愛の父親を亡くす不幸を味わった。この日から、安藤は「どんなことがあっても絶対に過去を振り返らない」と、固く心に誓い突き進んできた。幼い安藤が悲しみを乗り越えるには、ほかに方法がなかった。

「時間というものは戻らないので、悔いが残らないように生きようと決めた。自分のことは振り返らず、過去には戻らない。これは演技についても同じで、演技直後に反省点を振り返ることはあっても、後からビデオなどを見返すことはなかった。決めた道をこうと決めたら頑固に進んできた。でも、講演をきっかけに振り返ったら、自分が頑張ってきたのかなと思った」

 現在は大庭雅(24)らの振り付けを担当するが「できなかったことを後からネチネチと指摘するようなことはせず、指導は必ずその日で完結させる」といい、ポリシーを貫いている。

 ところで、女性選手は10代の成長期、身体的な変化でそれまで技術的にできていたことができなくなる。「半分の選手がそうなる。私も苦しんだ。『デブ、デブ』『やせなさい』と強く言われた。中には摂食障害になる人もいる。でも、これはホルモンバランスの崩れが体に出てるだけ。バランスを保てるようになれば悩むことじゃない。苦しんだからこそ、私なら理解してあげながらコーチングできると思う。悩みのある子たちを救ってあげられるような、心強い存在になりたい」と話す。

 安藤は出産を経て復帰した経験があるだけに、なおさらだ。「筋力が衰えて、再開の時は1回転から始めた。でも、体は覚えていた。筋力や体がついていけば、それ以前より上のレベルのことができるようになる」。女子選手にとって、頼れる存在というほかない。

 そんな安藤は「そろそろ、コーチの道を歩みたい。門奈先生のように、子供に夢を与えるコーチになることが、スケートを始めた9歳の時からの夢だった。夢を持てない子供が少なくないと言われる中で、早くに夢を持てた私は幸せだった。ぜひ、体が動くうちにお手本を見せたい。子供は吸収力があるので、見て覚えるのが一番だと思う」と、本格的な指導者転身をにおわせた。

 一時期はバッシングにさらされ、海外の選手を強くしたいと思っていたという。「反抗期だったのかな。でも、娘を授かってから日本の選手と触れ合う時間が増え、自分が日本代表でやらせてもらったありがたさが身にしみた。いろんなことがあったが、日本で後進を育てたい。いい環境があるなら、国内どこでも行く。今は日本選手がカナダなど海外に行くことが多いが、いずれは海外の選手が、優秀なコーチのいる日本のリンクにトレーニングに来るようにしたい」と意気込んだ。

 同イベントは安藤をはじめ、小塚崇彦、無良崇人、鈴木明子ら世界を知る元トップスケーターを迎え、23日まで同所で行われる。安藤は20、21日にも出演予定。講演あり、ワークショップありと盛りだくさんの内容だ。