ソフトバンク・王貞治球団会長(80)が2日、福岡市内で行われた球団納会で「鷹戦士の心構え」「常勝の真理」をナインに向けて異例の長さで熱く語りかけた。〝永久保存版〟の王スピーチ。直近10年で7度の日本一に輝いた強さの秘密が凝縮された球界必読の「王の教え」をノーカット公開する。

 王会長 今年の優勝、(日本一)4連覇のことはもうはっきり言って過去のことになってしまって、中には来季に向けてトレーニングを始めている人がいると思います。いいことがあればあるほど『よし、もっとやるんだ』という気持ちになれる。はっきり言って最下位になったらやる気なんかおきませんよ。本当に勝てば勝つほど、素晴らしさを知れば知るほど『よし!またやろう』という気になるんでね。ここにいるみなさんはそういう(勝てない)ことを経験していないから、今のように頑張れるのは当然だと、そのように思えるいい時代に生きていると思います。

 球団史には20年連続Bクラスの「暗黒時代」もあった。「王監督」時代、負けグセが染みついた空気を一変させるエネルギーは相当なものだった。ゆえに「今」をプレーする選手らに伝えたい思いがあった。

 王会長 だからここであえて言いたいのは、レギュラーの人たちとか一軍にいた人たちは、ほとんどそういったことはないと思いますが、特に若い人たちは、私は筑後に行って触れる機会が少ないのでこの場を借りて話しておきたいのは、上手にしてくれるんじゃないんでね、監督、コーチは。自分が上手になるんだと、自分がね。自分が監督、コーチの意見を聞きながら生かして、自分が上がっていくんだ、自力で上がっていくんだということね。人が上げてくれるんじゃないんだと。特に若い人が活躍してくれてこの何年間は育成上がりの人が活躍して、いいお手本になっている。若い人たちも去年まで一緒にやっていた人が一軍で大活躍してテレビで騒がれて、そういったことを見たらそんな遠くないんだと、もうちょっと頑張れば俺もいけるんだという、たぶん他の11球団の若い人にはない可能性を強く感じているんじゃないかと、そのように思います。だからこのオフ、他のチームの人以上に頑張れる。そういう目標をしっかり立てて頑張ってほしいと思います。

 最後はナイン全員に、今一度「プロ野球選手」である誇りを持って野球に向き合ってほしいと訴えかけた。

 王会長 せっかくこの世界に入ったんだから。これだけの世界に入れなくて、入りたくて入りたくて入れない人もたくさんいるわけですよ。今日も都市対抗の野球をやっていた。あの人たちも一生懸命同じ野球をやっている。いつかは我々と同じ世界でやりたい思っていると思います。そういうのを見て『負けるもんか』という新たな闘志を燃やしてやってほしいと思います。我々プロは残念ながら余韻を楽しんでいる暇はない。今年終わったらすぐ来年のこと、今年よかった人はまた来年大変なんですよ。今年と同じようないい成績が出せるだろうか。今年抑えた相手の打者が自分をどれだけ研究してくるだろうか。今年打った投手がどれだけ研究して自分に対して戦ってくるだろうかとか、そういう不安な気持ちはどんどん出てくる。でもそれを取り除くためには自分を高めるしかない。さっきも言ったけど、最下位のチームの人たちはどうやっていいかとか、なかなか自分の目標が立てにくい。幸いホークスのみなさんはすぐ自分の目標は立てやすい。せっかくこの世界に入ったんだから、できなくてもいいけど、とにかく自分の高い目標を立ててそれに向かって突き進むという人生を生きてほしい。2021年もしんどい年だけど、最後にはやったと言える年になれるようにみんなで自分を高めましょう。他の世界の自分の仲間たちの話を聞くと、ずいぶん人生楽しんでいるような感じがすると思う。だけど、彼らはみんな(プロ野球選手のことが)うらやましいんだと。もっともっとうらやましがらせようじゃないか。そういったところが我々の使命であり、この世界に入った以上、自分の意志では抜けられない。前にいって自分を大きくしてどんどん振るいにかけられるんだけど、その振るいの穴は一年一年大きくなるからね。だからその振るいから落ちないように自分を大きくするしかない。この最後に、この堅苦しい話ばかりだけど、誰もやらないけど、これが「真理」ですよ。我々にとっては。みなさんにやっぱりやらないといけないんだよ、というのを一つ伝えて私の締めの言葉にしたいと思います。

 安住することのない鷹の競争社会。そこに強さの理由がある。熱い言葉で「常勝の真理」を説き、日本一5連覇を目指す鷹ナインの背中を力強く押した。