勝負の行方にも影響は出そうだ。日本野球機構(NPB)と12球団は19日に臨時実行委員会を開き、21日開幕の日本シリーズでセ・リーグ球団のホームゲームでもDH制を採用し、今年は全試合で実施すると決めた。ソフトバンク側が18日に提案し、巨人側からも異論はなく特例として決定された。4年連続日本一を目指す工藤ホークスでは〝あの男〟の起用を検討するなど策を練り始めている。

 提案したソフトバンク側も巨人・原監督が「有利とか不利とか、そんなこと言っちゃうとダメなんだよね。野球界を発展させるという部分においては、やっぱり一歩踏み出す必要がある」と異論なく受諾してくれたことには敬意を示した。今季は新型コロナ禍により変則シーズンとなり、日本シリーズは異例の11月末開催。ソフトバンクからすれば、選手の故障リスクを軽減する意図があった。球団フロントは「かねて原監督は球界発展のためにとDH制の導入を口にしている。筋の通った思いもあるのだろう」と話した。

 全試合でDH制が採用されることが決まり、ソフトバンク側では日本シリーズでの〝ウルトラC案〟も浮上している。本来はDHなしだった第2戦の先発が想定されている左腕・今村に対してのバレンティン起用プランだ。

 同タイプのデスパイネも控えているが、首脳陣は一つの可能性として検討しているという。チームスタッフは「このところバレの打撃の状態がいいのも確か。今村から昨季3打数2安打1本塁打と打っていることも知っている。ベンチ入りメンバーに入らないと決まっているわけではないですから」と話す。

 移籍1年目のバレンティンはレギュラーシーズンで打率1割6分8厘、9本塁打、22打点と散々だった。ロッテとのCSでは出場登録されることもなかった。しかし、チームの誰よりもセ・リーグの投手を知っている。昨季はヤクルトで打率2割8分、33本塁打、93打点と数字を残しており、今村に対してはトータルで打率4割、2本塁打と打ってきた。

 しかも、ここへきての復調気配。シーズン最終盤には登録抹消されていたが「戦力として考えているので、帯同しながら調整する方がいいと判断した」(工藤監督)。一軍帯同で打撃コーチからのアドバイスを受けて調整を続け、CS前に行われた3度の実戦では6打席に立って4打数3安打2本塁打2四球とアピールした。

 日本シリーズはシーズンと異なり、公示されている40人枠の中から試合ごとにベンチ入りメンバーを選ぶことが可能。1試合ごとに違った戦略を取れる。過去にも短期決戦モードで選手を見極め「正解」を導いてきた工藤監督の判断となりそうだが、果たして〝鷹の最終兵器〟の大暴れはあるか。