【平岡洋二 連載コラム】暴力、部費使い込みで球児を裏切った指導者たち

2020年10月06日 11時00分

甲子園を目指す高校野球も決してきれい事ばかりではない

【平岡洋二「アスリートの解体書」(30)】長くやってるといいことばかりではない。勝てなかった大学野球部の話の次は高校野球部の不祥事の話。私が指導した高校野球部の部長・副部長・監督の部費の不適切な管理と支出について、日本学生野球協会によって処分された事例。他山の石としてもらうために実際にあった事例を匿名ではあるが触れておきたい。

「A、B、Cにやられましたわ」。監督退任の日に私に対して語った監督の言葉。A、B、Cという保護者によって無実の罪を着せられたと。ここで言う部費とは、学校から支給されるものではなくて、個々の部員が部に対して納める活動費のこと。月々1万円。該当の1年間だけでも総計1000万円近くに上った。その大半が使途不明で別途、都度、徴収していた遠征費の会計報告もなかったというのだから異常だ。

 業務上横領罪(刑法253条)とみなされれば、法定刑は10年以下の重罪だ。監督はそれまでも体罰で謹慎処分を受けたり、公式戦の敗戦後に罰走を課したりしたことで一部マスコミに体罰と報道され、それをきっかけとして、被害者たちが声を上げ、過去の犯罪的行為が次々と露呈していた。週5回の焼き肉会にキャバクラ、私的に利用していた車の代金、ガソリン代、日々の弁当代等々やりたい放題で大半は領収書さえなく監督室には常時現金3万円を置いておき自由に使えるようにしていたというのだから言語道断だ。

 裏帳簿ならぬ「裏通帳」さえあったとの会計監査報告。両親が一生懸命働き高い授業料を納め、苦労して部費や遠征費などを払っていたのは分かっていたはず。「週5の焼き肉にキャバクラだと? ふざけるな、大バカどもが!」。取材した記者や関係者に聞くと私に言ったのと同様に「はめられた」と、罪を認めていなかったらしい。以前、同時に処分を受けた部長の使い込みが発覚した際、憤慨していたではないか。また、チームを強くするために一生懸命だった姿を見ていたから、何が彼を変えてしまったのだろうかと思ったものだった。

 過去分も調査すれば被害金額は1000万円は優に超えると推察され、繰り返し暴行を受けていた卒業生を含む複数の被害生徒本人や保護者は現在も厳罰を求めていると聞いた。本来なら懲戒免職相当なのに部長は被害者である生徒の前でいまだ教壇に立つ異常な状態が続いており、以前の犯罪行為の際に内密に済ませたことが結果的に新たな犯罪の抑止につながらなかったのではないだろうか。

 元警察官としては、事の重大性・悪質性・被害程度・被害者数・反復性・被害者感情・反省の度合い等々鑑みて正式に捜査機関での法の裁きを受けるべき事案だと思うが、事なかれ主義としか思われない学校の判断【依願退職(退職金支給)・示談(確定分のみを保護者に弁済。過去分・不明分は不問)】に「感謝」して罪を認め、真摯に反省して真面目に人生を歩んでもらいたい。

 監督の更迭から半年ぐらい経過したころ「洗脳が解けました」と笑いながら話した部員の笑顔を見て多感な時期の子供たちに与えた罪の重さを再認識させられた。精神的(洗脳)・肉体的(体罰)・経済的(横領)の三罪。こうした事例はこの学校だけの問題ではないはず。携わる者皆が襟を正す教訓にしてもらいたい。言うまでもないが、この当該者は高校野球には二度と関わることはできない。

 ☆ひらおか・ようじ「トレーニングクラブ アスリート」代表。広島県尾道市出身。広島大学教育学部卒業後、広島県警に勤務。県警での体育指導を経験した後、退職しトレーニングの本場である米国で研修を積み、1989年広島市内に「トレーニングクラブ アスリート」を設立。金本知憲氏(前阪神監督)や新井貴浩氏(元広島)、丸佳浩(巨人)ら200人に及ぶプロ野球選手を始めJリーグ・サンフレッチェ広島やVリーグ・JTサンダーズ広島など数多くのトップアスリートを指導する。また社会人野球や大学野球、高校野球、ホッケー日本代表などアマチュア競技のトレーニング指導にも携わり選手育成に尽力。JOC強化スタッフ、フィットネスコーチなどを歴任した。実践的なトレーニング方法の普及のためトレーナーを養成する専門学校での講義なども行っている。ジムのHPは「athlete―gym.com」。

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