第100回全国高校野球選手権大会は連日、甲子園を舞台に熱戦が繰り広げられている。そんな球児の憧れより、野球選手としての夢を選んだのがロイヤルズとマイナー契約を結んだ結城海斗投手(16)だ。すでにプロとしての第一歩を踏み出している。今春、中学校を卒業したばかりで、日本人最年少のメジャー挑戦とあって日本だけではなく、米国でも注目されている。どう育てるのか。球団副社長兼GM補佐のJJ・ピコロ氏(44)、国際スカウトの大屋博行氏(52)を直撃。16歳右腕の今と将来を聞いた。
結城は現在、アリゾナ州サプライズの球団施設でアリゾナ・ルーキーリーグの若手選手と一緒に練習している。チームメートは、今年のドラフトで指名された高卒ルーキーや、ドミニカ共和国出身の17、18歳の有望株で、日本人はもちろん結城一人。ホームゲームではチームと行動するが、ベンチ入り登録はされていない。
午前は英語のレッスンをマンツーマンで1時間ほど。ランチ後はジムでトレーニングメニューをこなす。そしてフィールドに出てウオームアップ、キャッチボール、投内連係、野手陣のフリー打撃での球拾い、ランニングメニューなど。投球練習は封印している。
トレーニングメニューでは、まず筋力、関節の可動域などあらゆる数値を測定した。また、骨などを見て成長具合をチェックした担当医は現在188センチの身長が「まだ伸びそうだ」と予測したという。約1週間かけた検査を終え、ようやく「結城海斗・育成プログラム」の大枠が決まった。
異例の契約で入団した16歳右腕は球団の意向、方針により、本人への取材及び撮影はNG。ピコロGM補佐に現状を説明してもらった。「とてもインプレッシブな16歳だ。腕の振り、ボディーなど、素晴らしいものを持っている。とても楽しみだし、我々はエキサイトしている。長期にわたるプロジェクトを、まずは投手としての体をつくることを念頭に置いて始める。まずはカイトがプロ野球選手としての第一歩を、確実にスタートできるよう我々も力を尽くしたい」と話すとこう続けた。
「食事、睡眠、トレーニング、投球プログラムなど投手に必要な準備に取り組むことになる。彼が今までどのようなルーティン、考えで野球に取り組んできたかも洗い出し、考慮し、アレンジしていけたらいい」
具体的にどう練習しているのか。大屋国際スカウトは「彼にとっては今までと違う形ですし、投げたくて来ていますので、戸惑いもあると思います。本来は投げさせない予定だったのですが、彼は16歳で来た子の中では優れている方なので、キャッチボールをスタートさせることになりました」と説明。
例えば、8日は45フィート(約13・71メートル)で10球、55フィート(約16・76メートル)で10球、60フィート(約18・29メートル)で20球、75フィート(約22・86メートル)を20球の計60球で、9日はノースロー。10日は45フィートで10球、55フィートで10球、60フィートで15球、75フィートで15球、そして塁間にあたる90フィート(約27・43メートル)で10球の計60球といった具合。リハビリのように段階を踏んでいる。
大屋氏は結城にこうアドバイスしている。「限られた球数の中で、どれだけ質のいい球を投げ続けることができるかが重要で、投球とは何か、正しいボールの投げ方とは何か、いい軌道をつくっていこうという話をしています。つまり、キャッチボールからしっかりやるってことですね」
英語については苦戦中。英語の授業だけではなく、スマホのアプリを使った英語レッスンも行っているという。
「これはね、一日のうちでどこでやってもいいので30分間、ヒアリングの練習。ちゃんと答えて、90点以上取らないとアカンとは言ってあります。まあ、ゲームみたいなもんですわ」(大屋氏)。そのかいあって「だんだん英語で返せるようになってきた」という。
気になる実戦はいつになるのか。ピコロGM補佐は見通しを次のように明かす。
「今はコーチ陣らと面識を持ったり、施設について学んでいる段階で、急ぐ必要はまったくない。実戦デビューは、来年のアリゾナ・ルーキーリーグになるだろう。マイナーでは投手の球数制限を75球以下としている。おそらくはドミニカのサマーリーグで取り入れている投手プログラムに似たものになるだろう。あらゆる評価を続けながら、投球数、イニング数を決めていくと思う」
日本人のメジャー挑戦の常識を覆した結城。アメリカンドリーム実現が楽しみだ。
【まだ誰もやったことのないことを】本紙が結城を初めて取材したのは昨年7月。毎年シカゴ近郊クリスタルレークで行われるMCYSAと呼ばれる野球の全米選手権大会だった。結城はU―15部門のリトルシニア日本代表で投打に活躍し、優勝に大きく貢献した。
7月23日、イリノイ州チームとの試合で先発し、4回1安打無失点と圧巻の投球だった。試合後「投げたのは真っすぐ、スライダー、スプリットとツーシームです。良かったのは真っすぐだと思います」と振り返った。また、進路についてはチームメートが強豪校への進学を決める中「まだ誰もやったことのないことをやってみたい。将来はメジャーで投げたいです」と静かな口調ながら、熱く語っていた。気持ちはすでに固まっていたのかもしれない。
参考にしている投手については「ダルビッシュさん」と即答。「僕、小学生の時、ダルビッシュさんと同じ少年野球の出身なんです。羽曳野ブラックイーグルスっていうんですけど」と目を輝かせるとこう続けた。「もしいつか会う機会があったら、食事のこととか聞いてみたいです」。その日は遠くない。
☆ゆうき・かいと 2002年5月12日生まれ。大阪・羽曳野市出身。峰塚中では河南シニアでプレー。17年夏のリトルシニア全米選手権に日本代表として出場。当時から140キロ超の球速を誇り、18年7月8日にロイヤルズと契約。日本選手が中学卒業から直接メジャー球団と契約するのは史上初で、16歳でのメジャー球団との契約は、日本選手では史上最年少。188センチ、77キロ。右投げ右打ち。












