オウム真理教の一連の事件で6日に教団元幹部ら6人とともに死刑が執行された元教祖・麻原彰晃こと松本智津夫元死刑囚(63=執行時)の遺体が9日、都内の斎場で火葬された。親族や「アレフ」などオウムの後継団体や信者らの間で麻原元死刑囚の遺骨争いが深刻化する事態を公安当局が懸念する中、両親と縁を切ったハズの四女が“相続人”指名された背景は?

 麻原元死刑囚の遺体はこの日朝、土谷正実元死刑囚の遺体とともに東京拘置所から車で運び出され、都内の斎場で焼かれ、遺骨は拘置所に戻された。

 関係者によると、執行直前に東京拘置所職員が麻原元死刑囚に遺体の引き取り人を尋ねたところ、「四女」と答え、さらに名前も伝えたという。“遺言”に従い、火葬後に四女に引き渡される予定だったが、四女側は現時点での受け取りは「身の危険がある」と拒否。それでも四女は代理人のブログを通じて、元死刑囚の意思を知り、驚いたとしつつ「実父の最後のメッセージなのではないかと受け入れることにします」と伝えた。

 麻原元死刑囚の妻と子供4人(長女と四女以外)は連名で、「(麻原元死刑囚の)精神状態からすれば(遺言は)ありえない」としている。一方で四女は、自身が麻原元死刑囚の最後の接見者とみられることが、遺骨引き受け指名で「思い当たる節」としている。

 教団内で「アーチャリー」と呼ばれた三女の松本麗華さんは9日にブログで、「(四女への遺言は)作られた話」とし、「遺骨がだめならば分骨でもとお願いをしました」。さらに「父の遺体、遺骨の引き渡しに関しても、家族間の争いなどは生じておりません」と記したが、家族間の関係はかなり複雑となっている。

 長年、オウム真理教を取材しているジャーナリストで参院議員の有田芳生氏は「松本元死刑囚は常識的に考え、意思表示ができない。また逮捕されてから23年間、家族の間で妻と三女、長女、四女といろんなくっついたり、離れたりのトラブルがあった。その状況を松本元死刑囚が知っているハズがないし、四女は昨年、両親と縁を切りたいとまで表明している。もし本人の意向があったとしても、離婚もしていなかった妻を指名するのが当然。妻や教団にかかわっている人間に渡してはいけないという法務当局の政治的判断が見える」と指摘する。

 麗華さんは遺骨の受け取りに関し、母親に権利があると主張し、現在は四女VS妻・弟妹の構図に見えるが、この妻・弟妹側内の関係は必ずしも一枚岩ではないという。

「妻はアレフに支えられているのに対し、三女は自立して、長女と一緒にやっていこうとしている。妻と三女の関係は良くない。アレフと三女の関係も良くない」(有田氏)

 一方、相続人となった四女は何者なのか? 2010年に松本聡香(さとか)のペンネームで著書「私はなぜ麻原彰晃の娘に生まれてしまったのか」を出版。06年にオウムから自立するに当たっては、ジャーナリストの江川紹子氏が一時後見人となったこともあった。昨年11月に記者会見し、自身が死亡した際、親が相続人にならないように推定相続人の廃除を申し立てし、認められていた。当時からオウムを脱会した元信者をサポートしている滝本太郎弁護士が代理人を務めている。

「滝本さんは今、ノーコメントを貫いているが、四女が遺体引受人に決まった後に僕が電話した時は『ビックリしています』と話していた。(教団と敵対している)滝本さんの立場なら、遺骨を妻や三女に渡さないと当局は思っているからこそ四女に指名したのでしょう。ただ、四女側が、遺骨の引き受けは別のトラブルに巻き込まれる可能性があるから、直ちの受け取りを拒否したのもまっとうな対応でしょう」(有田氏)

 当面、遺骨は東京拘置所で保管されるというが、いずれ四女側へ引き渡されれば、妻や三女側が法廷闘争に出る可能性もある。「カルトの教祖であっても遺骨は遺骨で、分骨でもいいから遺族に返すしかない。人道的にも成り立たないし、アレフが宗教的に利用したとしても大きな動きにはならないでしょう」(有田氏)。さまざまな思惑が働く“聖灰争い”となる。