【ニュースシネマパラダイス!】どうも! 有村昆です。「映画ちいかわ 人魚の島のひみつ」(7月24日公開)が大ヒットとなっています。今年公開された「名探偵コナン」の新作映画をも超える、とてつもないペースで観客を動員し、公開38日間で興行収入122億円を突破しました。もともと人気のコンテンツでしたが、ここまでのフィーバーは誰も予想していなかったのではないでしょうか。

 今年の映画界に突如巻き起こったちいかわ旋風。映画コメンテーターとして見逃すわけにはいかないので、今週は件の「映画ちいかわ 人魚の島のひみつ」を紹介します。

 ちいかわ、とは「なんか小さくてかわいいやつ」の通称で、二頭身の動物を模したキャラクターです。原作は漫画で、かわいらしい見た目と、楽しくちょっぴり切ない物語が受け人気を獲得しました。映画では、ちいかわたちが高額な報酬を目当てに特別な島に上陸。島に住むセイレーンを討伐する計画に巻き込まれていきます。

 今作は、物語に二面性がある点が最大のポイントです。子供たちにとってこの映画はちいかわの冒険物語なんですけど、大人が見ると社会の闇が見えてくるんですよ。うたい文句の「島での簡単な討伐で100倍の報酬」なんてもろ闇バイトをほうふつとさせます。さらに、ちいかわたちにもいろいろな個体差、環境格差があって、その中で頑張るけど全く報われなかったりもする。ものすごくかわいいキャラクターにだまされるんですが、今作は現実社会のシビアさを我々に再確認させてくる物語で大人は全然ニコニコ見てられないんですよ。だんだん、これは私たちの物語なんだと気付かされる。その過程が面白くもあり恐ろしくも感じました。

 また、物語の後半では、「本当の悪は誰なのか」を考えさせられることになります。島の秘密と「犯人」が明らかになるんですが、犯人にもそうせざるを得ない深刻な状況があるんですよね。どちらも悪ではなく、互いに正義だと信じている。真相を知ったちいかわたちが、正義と優しさのはざまで揺らぎ、答えの出ない問いを背負わされる展開には驚かされました。

 結末はぜひご自身の目で見ていただきたいのですが、見終わった後、なにか気持ち悪い悶々とする感情が胸に残りました。一体何が正解だったのか…。やはり、100億円を突破するにふさわしいメッセージ性を秘めた映画だと感じました。かわいい羊の皮をかぶった狼のようなとんでもない作品です。ぜひ劇場でご覧ください。