米国とイランは15日までに停戦を60日間延長する枠組み合意に達し、戦闘終結に向けた了解覚書に合意したとそれぞれ発表した。スイスで19日に署名式を行うという。その後、核問題に関する本格的な協議が始まる見通しだが、双方の主張の隔たりは大きい。本当に最終合意に至るかは予断を許さない。

 今回の合意は、世界の原油および液化天然ガス輸送量の約20%を担っているホルムズ海峡の正常化を目的としている。ただし、重要な核問題については60日間の交渉に委ねられる。

 中東の衛星テレビ局アルジャジーラによると、了解覚書への非公式な署名は、カタールの仲介者立ち会いのもと10日に行われ、14日にパキスタンの仲介を通じて公表された。ところが、15日にイスラエルがレバノンの親イラン組織ヒズボラを標的に攻撃したことで、合意が崩壊寸前になったという。カタールは「イスラエルが交渉を妨害するために行動している可能性があるため、慎重に対応すべきだ」という米国からのメッセージをイラン側に伝え、イラン側は仲介努力に応じ、合意発表にこぎつけた。

 了解覚書の内容は公開されていない。しかし、イランの通信社マーヘル通信は、主な内容について「すべての戦線において、戦争および軍事行動を停止する」「イラン側の取り決めのもと、30日以内にホルムズ海峡を再開放する」「米国およびその同盟国は、3000億ドル規模のイラン経済再建計画を提示する」「凍結されているイラン資産240億ドルを解放する」「恒久合意に向けた60日間の交渉を実施する。この交渉では、核問題などが協議される」などと伝えた。弾道ミサイル計画には触れていないようだ。

 米国事情通は「一歩も譲らなかったイランが合意するということは、裏で米国が譲歩したということでしょう。そもそも戦争は、米国がイランに核兵器を作らせないために始まりました。しかし、イランがホルムズ海峡を掌握したことで、イラン側が核問題とホルムズ海峡問題という2つの問題にしたのです。結果、世界が迷惑をこうむっているホルムズ海峡の開放が優先され、核問題は覚書署名後の60日間の交渉中に協議するように先送りされました」と語る。

 米国の譲歩があったためか、イランとしては、イスラム革命防衛隊などの国内の強硬派向けに「ミサイル問題は守った」「ホルムズ海峡を交渉カードにした」「巨額の復興支援を勝ち取った」「凍結資産を取り戻した」といった〝外交的勝利〟を演出できたのかもしれない。

 今後、最終合意に至るか否かには、破綻ポイントがありそうだ。

「高濃縮ウランの処分方法が最大の火種です。米国側は『高濃縮ウランは国外へ搬出・廃棄する』という立場。イラン側は、『国内で低濃縮化する』と主張しています。イランが将来核兵器級の濃縮を再開できる余地を残すのかという根本問題です。60日以内に妥協できなければ、最終合意は崩れる可能性があります」と同事情通。

 また、イスラエルとしては、イランを徹底的に弱体化させない限り、安心できない立場にあるため、戦争を継続させたい意向がある。イスラエルがヒズボラへの攻撃を続ければ、イランが「停戦違反だ」と判断する可能性もあり、波乱含みの様相だ。