東京・多摩市長選(12日投開票)が5日告示され、現職で5選を目指す阿部裕行氏(70)と新電力サービス会社代表社員の松田道人氏(52)の一騎打ちとなった。松田氏は〝AIメイヤー〟名義で、一昨年の都知事選や衆院選に出馬し、「AIによる公正な政治」を掲げていたが、今回は本名での挑戦で何があったのか――。

 松田氏の同市長選への出馬は2014年から4度目。18年には「人工知能が多摩市を変える」と市政にAIの導入を訴え、注目を集めた。AIの活用は今では個人にとどまらず、各自治体でも導入され、先の衆院選ではAI活用を訴えた安野貴博党首率いるチームみらいが躍進した。

 松田氏はAI政策を訴えていたパイオニアで、〝10年早過ぎた男〟ともいわれている。今回の市長選ではさらに先鋭化したAI政策が掲げられるかと思いきや、聖蹟桜ヶ丘駅前での第一声では、市庁舎建て替えの見直し、週休4日制の導入、市長報酬ゼロなどの公約が並び、AIを前面に押し出すことはなかった。さらにはトレードマークとなっていた白仮面も着用せずに素顔と本名をさらけ出した。

かつては「AIメイヤー」として顔を覆面で覆っていた松田道人氏
かつては「AIメイヤー」として顔を覆面で覆っていた松田道人氏

 松田氏は「AIが導き出す中立やリスクへの過剰反応を政治判断の根拠に据えることには社会を停滞させる〝平均のワナ〟に陥ることが分かりました。現状維持を正当化する側に傾斜しがちで、未知の危機に対する抜本的な改革が時に必要となる政治とは本質的に対極の存在。プロンプトで『過去にとらわれず革新的な案』と指示しても解決策にはなり得ない。その指示自体が非中立な操作で、AIの客観性を自ら否定する矛盾をはらんでいる」と行政のトップとして意思決定する場面で、AIの限界や矛盾点に到達してしまったという。

 意思決定の過程において、AIは活用できるものの「AIには信念も覚悟もない。政治において重要なのは『何を言うか』ではなく『誰が言うか』という当事者責任です」と現時点での答えを導き出したという。

 それでもヒューマノイドロボットやAIのテクノロジー導入で、人手不足の解消につながるといい「週に3回働いて、4日休む社会を目指していく」と働き方改革などではAIのフル活用を訴えた。