泥酔してケバブ店のドアを蹴破った事件で謹慎した歌舞伎役者の中村鶴松(30)が、中村屋一門のひいき筋から怒りを買っている。中村屋の伝統演目で「初代中村舞鶴」を襲名する目前に事件を起こしたからだ。

 中村勘九郎、中村七之助の兄弟を中心に中村屋一門が毎年行う全国巡業公演「春暁歌舞伎特別公演」公式サイトは21日、鶴松の同公演への出演について「見合わせることとなりました」と発表した。今年は3月に東京、大阪など9都市で22公演が予定され、勘九郎、七之助とともに鶴松も出演予定だった。

 鶴松を巡っては21日、所属事務所から謹慎が発表され、松竹からは「猿若祭二月大歌舞伎」(2月1~26日、東京・歌舞伎座)での休演が報告された。これにより予定された舞鶴の襲名が見送られた。梨園関係者の話。

「話題は鶴松さんの事件で持ち切りです。中村屋が大切にしてきた演目『雨乞狐』の上演を目前に控えたタイミングで事件を起こし、ひいき筋の憤怒を買っています」

 鶴松は「猿若祭――」で演目「雨乞狐」に出演し、舞鶴を襲名予定だった。「雨乞狐」は故中村勘三郎さん、勘九郎の親子が演じてきた。中村屋にはゆかりが深い。

 勘九郎は2012年に一部インタビューで、「雨乞狐」は勘三郎さんのために「当て書きされた」演目だと明かし、自身が勘九郎を襲名することになったら「絶対やりたいと思っていた」と同年の襲名演目にリクエストしたと語っている。つまり、勘九郎も鶴松も襲名演目は「雨乞狐」であるわけだ。

「雨乞狐」は演者が体をフルに使う〝ハード系〟の演目でもあり、勘九郎は06年に博多座で演じた際、ヒザの靭帯を切ったほどだ。

「勘三郎さん、勘九郎さんと受け継がれた中村屋ならではの演目を一般家庭出身の鶴松さんは託されたのに、自らフイにしたわけです」(同)

 当の鶴松は昨年9月、東京・浅草公会堂での自主公演「鶴明会」ですでに「雨乞狐」を披露していた。

「体力的にキツく、終演後には崩れ落ちるようにして座り込んだそうです」(同)

 出自から〝リアル国宝〟と称される中村屋のホープは今後、汚名返上できるか。