【クリス・レア/何がベニーに起こったか(1978年)】

「ドライビング・フォー・クリスマス」「オン・ザ・ビーチ」などのヒット曲で知られ、昨年12月22日に74歳で亡くなった英国の名シングソングライター、クリス・レアのファーストアルバム。下積み期間が長く続き、デビューアルバムをリリースしたのが27歳の時だった。

 当時はパンク/ニューウェーブの嵐が吹き荒れていた時代で、独特のスライドギターと枯れたボーカルで独特の地位を築き上げた。シングルカットされた「フール」は全米12位を記録。一躍、人気シンガーとなった。

 当時から孤高の人という感が強く、ニューウェーブでもなくハードロックでもない、独特のサウンドを作り上げた。切なくも湿っぽさのない抒情性と、乾いたスライドギター。強いて挙げれば似た例はマーク・ノップラー率いるダイアー・ストレイツだろうか。とにかく不思議なポジションで活動していたシンガーである。

 アコースティックギターで始まるオープニングのタイトル曲、美しいピアノの旋律が胸に響く「ビコーズ・オブ・ユー」、そしてクリスが心地良いメロディーメーカーとしての才能を発揮した「フール」。当時、ニューウェーブに夢中だった記者はこの曲がラジオから流れてきた時、一瞬で心をつかまれてしまった思い出がある。アルバムはカッティングが印象的な「ファイアズ・オブ・スプリング」で幕を閉じる。地味だが心に染みる名盤である。

 その後、不遇の時代が続いたがコンスタントにアルバムを出し続けて86年の「オン・ザ・ビーチ」で再ブレーク。89年の「ロード・トゥ・ヘル」が全英1位に。90年代以降はブルースに傾倒した名盤を出し続けた。あまりに有名な86年のクリスマスソング「ドライビング・フォー・クリスマス」は、もはや冬の定番となった。これからも永遠にクリスマスには街のあちこちで流れ続けるだろう。改めて合掌。