【T・レックス/電気の武者(1971)】

 グラムロック全盛期、マーク・ボランをカリスマ的存在に押し上げたバンドのセカンドアルバムにして最高傑作。全英1位を通算8週も獲得する大ヒットとなった。

 単純にして明快。しかし音全体はどこかゆがんでいる不思議なアルバムである。単純なギターリフが中心となっているが、そこに奇妙なストリングスとコーラスが導入され、チープながらもゴージャスな音感が、アルバム全体を覆っている。「聴くだけで素通りさせない」というマークの執念めいた気概を感じる。何よりも聴いていて気持ちいいのだ。ロックンロールの本質が「カッコいい」ことであるならば、まさにロックンロールの見本のような名盤である。

 アルバムからは代表曲「ゲット・イット・オン」が全英1位、全米10位の大ヒットを記録。「ジープスター」も全英2位を記録した。その他にも冒頭の「マンボ・サン」や「コズミック・ダンサー」「リーン・ウーマン・ブルース」「ライフ・イズ・ア・ガス」「リップ・オフ」など全11曲、息もつかせぬ性急さでアルバムは約40分間、疾走を続ける。

 当時のグラムロックシーンはデヴィッド・ボウイという巨星が存在したが、ボウイは翌年に歴史的名盤「ジギー・スターダスト」を発表するなど別格的存在であり、バンドは全く違うアプローチで独自の音楽世界を構築していく。マークはその後も名盤を生み続けるも、77年に交通事故のため、29歳の若さで夭折した。まさに短い時代を全力疾走した本物のスーパースターだった。