城で“ととのう”時代が来た――。長崎・平戸城につながる西九州道「平戸インター」が12月14日に開通し、福岡方面からのアクセスが一気に向上する。海を望む高台の平戸城では11月1日から日本初となる文化財常設の“城サウナ”が誕生。そんな大胆な試みは、どんな可能性を広げるのか。平戸観光協会の広報担当・近藤あかねさん(25)と、平戸城を管理する責任者・山野義信さん(58)に、その舞台裏と未来図を聞いた。

長崎県の平戸島北端に位置する平戸城
長崎県の平戸島北端に位置する平戸城

 平戸城は1599年に築かれ、海に張り出す高台に構える特異な城として発展してきた。近藤さんは「海の端にあり、敵襲があった際に見張りのような役割もあったのでは」と語り、海外交流の拠点だった平戸港を一望できる立地に意味があったと説明する。松浦家26代・鎮信(しげのぶ)が「日の岳城」を焼却して領民を守り、30代・棟(たかし)が1704年から再築を進め、1718年に現在の平戸城が完成した歴史は、今も息づいている。

 明治の廃城を経て、昭和の復元と平成の大規模改修により展示は大きく刷新された。映像やジオラマなど体験型の展示が増え、「子ども連れにも紹介しやすくなりました」と近藤さん。本物資料の公開についても「価値があるので、管理しながら展示しています」と文化財としての姿勢を示す。

平戸城の懐柔櫓のテラスに登場した城サウナ「CASTLE SAUNA」
平戸城の懐柔櫓のテラスに登場した城サウナ「CASTLE SAUNA」

 その平戸城で今、特に注目を集めているのが、城泊施設「平戸城 懐柔櫓(かいじゅうやぐら)」に併設された「CASTLE SAUNA」だ。文化財に常設されたサウナとしては日本初で、オープン直後から反響が広がっている。サウナ室にはフィンランド老舗メーカー「ハルビア」製の電気ヒーターとサウナストーンを導入し、完全貸し切りのプライベート空間として設計。専用の水風呂も備え、温度・湿度・動線までこだわった本格仕様だ。

 山野さんは「外観は一切いじらず、内部だけ木材中心に整えました」と語り、文化財の景観との調和を重視したという。外気浴スペースからは平戸瀬戸や平戸大橋、天守閣、見奏(けんそう)櫓まで一望でき、「景色の良さが一番の反応。テラスから写真を撮って帰られる方が多い」と笑顔を見せ、「海風を感じながら、文化財の中で過ごせる体験はここならでは」と胸を張った。

城サウナの内部も本格的
城サウナの内部も本格的

 平戸インター開通について、近藤さんは「福岡から日帰りでも来やすくなる」と期待し、山野さんも「到着が早くなれば、周遊する時間が増える」と見込む。時間的なゆとりが生まれることで、サウナ利用の増加や街歩きの広がりにもつながりそうだ。

 また、平戸城の周辺には松浦史料博物館や平戸オランダ商館など短時間で巡れる施設も多く、クルーズ船の乗客や米軍関係者など短時間滞在の外国人客にも向いた環境だ。「平戸城だけでなく、観光エリア全体での動きにも広がりを感じています」と山野さん。最後に近藤さんは「歴史と自然が豊富。街全体がもっとにぎわってほしい」と語った。

 アクセス向上を追い風に、歴史も自然も文化も――「城」と「街」が一体となり、平戸の魅力はさらに広がっていきそうだ。