大相撲秋場所13日目の26日、大嶽親方(64=元十両大竜)が東京・両国国技館で会見した。大嶽部屋の師匠を務める大嶽親方は秋場所後に65歳の定年を迎える。千秋楽翌日の29日付で熊ヶ谷親方(元幕内玉飛鳥)が「大嶽」を襲名して部屋を継承し、現大嶽親方は「熊ヶ谷」を襲名して部屋付きとなる。

 昭和の大横綱・大鵬が開設した「大鵬部屋」に入門し、その後に部屋を引き継いだ大嶽親方は現役時代の師匠との思い出を回想。「教えというよりも、怒られたことしかない。何をしても『バカヤロウ!』から始まる。稽古以外でも私生活の面でよく怒られた。ちゃんこを作る時に野菜の入れ方が違うとか。細かいことをうるさく言われました」と振り返った。

 特に思い出に残っているのは、幕下上位で十両が目前だった1987年秋場所の出来事だ。勝ち越せば十両に上がれる可能性があったなか、結果は負け越し。部屋の千秋楽祝賀会で後援者らに酒をついで回っていた時に〝事件〟が起きた。

 大嶽親方は「ある後援会の方に『お前が負け越したのは、稽古せんからだ』と言われたんです。私も当時、気が短くてとんがっていましたから。ブチ切れてお客さんが数百人いる前で『お前は稽古を見たことがあんのか!』と声を荒げてしまった。私は(稽古を)死に物狂いでやったつもりでいたもんですから。稽古を見たことない人間に言われたのが、ものすごく腹が立ったんです。大鵬親方に呼ばれて『バカヤロウ!』と…」。その後、大鵬親方からはこっぴどく叱られたという。

 師匠を怒らせてしまった大嶽親方は引退を決意。翌朝に師匠のもとへ謝罪と辞める意思を伝えに行くと、昭和の大横綱は意外な反応を見せた。

「師匠は新聞を読まれていた。私の顔を見てニヤッと笑った記憶がある。『いいんだよ。元気があっていい』と逆に慰められたというか。『私はこのまま辞めて帰ります』と言ったら『バカヤロウ! それで納得できるのか? 悔しかったら上がって見返してやれ!』と言われて。頑張らないといけないと決意を固めた。2場所後に、おかげさまで(十両に)上がらせていただいた」と懐かしそうに振り返った。