作家で、日本維新の会の参院幹事長の猪瀬直樹氏(78)の著書「昭和16年夏の敗戦」が再び脚光を浴びている。6日の参議院予算委員会で質疑を行った猪瀬氏に対して石破茂首相が同書を「その価値は不滅」と称賛したからだ。猪瀬氏は同書を例示し、戦時中の軍事費と現在の医療費の膨張が類似していることを指摘し〝医療費の無駄〟を追及した。医療費が膨らみ続ければ財政破綻の道をたどってしまう。医療費版「令和7年の敗戦」を回避するために猪瀬氏が緊急提言をした。

 石破首相は防衛庁長官時代の2006年に読んだ「昭和16年夏の敗戦」に感銘を受け「若い方に『安全保障は何を読んだらいいですか』と聞かれることが時々あるんですが、真っ先にお勧めする。この本の価値は不滅」と予算委員会の席で述べた。

 同書は日米開戦直前の夏に総力戦研究所の若きエリートからなる模擬内閣が、データを基に「日本必敗」の結論を出しながらも無謀な戦争へと突入した過程を克明に描いたノンフィクション作品。その中で日本的組織の構造的欠陥をあぶり出した。時を経て日本は膨れ上がる医療費をめぐり、国家破綻の危機に直面している。

 ――同書を引き合いに出し医療費の闇に光を当てた

 猪瀬氏 昭和16年の時の軍事費は右肩上がりだった。現在の医療費も同じ角度で上昇している。あえてパラレルに考えることで危機を実感してもらうことができた。今年度予算で社会保障関係費の割合は56%。昭和16年の軍事費と同じような膨らみ方をしながら国家予算の半分を占める。

 ――当時、軍事費の膨張をなぜ止められなかったのか

 猪瀬氏 陸海軍の強力なパワー。いわゆる圧力団体。その力によって予算がゆがめられた。医療費も医師会、薬剤師会という圧力団体があるからムダなものがいっぱいあるのに削減できない。

 ――ムダなものとは

 猪瀬氏 一例を挙げると服薬管理指導料で「お薬手帳を持ってません」と言ったら590円取られた。今度、持って行ったら450円取られた。関所の通行料じゃないんだから。過去の政策のツケが回ってきて、あと数年で国民医療費は50兆円を超える。このままでは令和7年の敗戦になりかねない。

 ――無謀な戦争によって多くの若い命が失われた

 猪瀬氏 医療費負担で若い世代が犠牲になっているという点においても酷似する。自分の給与明細を見てごらんよ。現役世代の社会保険料負担がものすごく増えている。若い世代は血みどろになっているじゃない。医療費の急激な増加を止めなければいけない。

 ――日本維新の会は2月に「社会保険料を下げる改革案」を公表した

 猪瀬氏 国民医療費の総額を年間4兆円削減することで、現役世代1人当たりの社会保険料負担を年間6万円引き下げる。

 ――削減方法は

 猪瀬氏 今週にも自公維の協議体が設置される。そこで丁々発止の議論が交わされます。

 ――石破首相に期待することは?

 猪瀬氏「昭和16年夏の敗戦」の愛読者である石破総理には歴史観がある。日本の行方を決める総理に求められるものは、知性に基づくブレない意思決定力だと思う。

 ☆いのせ・なおき 1946年長野県生まれ。作家。86年「ミカドの肖像」で大宅壮一ノンフィクション賞、96年「日本国の研究」で文藝春秋読者賞受賞。東京大学客員教授、東京工業大学特任教授を歴任。2007年東京都副知事、12年東京都知事。22年参院議員当選。日本維新の会・参院幹事長。