オカルト評論家・山口敏太郎氏が都市伝説の妖怪、学校の怪談、心霊スポットに現れる妖怪化した幽霊など、現代人が目撃した怪異を記し、妖怪絵師・増田よしはる氏の挿絵とともに現代の“百鬼夜行絵巻”を作り上げている。第193回は「SOS」だ。

 1984年の話である。大阪・千里丘の某小学校に伝わっている怪談である。その学校には「SOS」という怪人が住んでおり、その姿は茶色い大きな顔に角張った肩、真っ黒な目をしているという。SOSが住んでいるところは、体育館裏の小さなドアの向こう、もしくは旧校舎2階の奥、旧家庭科室であるという。

 その怪人に会った時は「SOS、やめてください」と答え続けなければ、SOSに殺されてしまうという話であった。

 ある朝、登校すると学校中が大騒ぎになっていた。SOSの足跡がついているというのだ。旧校舎そばに倉庫のようなトタン屋根の建物があったのだが、その天井にSOSの足跡があったのだ。天井は吹き抜けで2階くらいの高さがあって、その真ん中あたりに唐突に2つ、3つの足跡が現れていた。

 また、ある日の授業中、廊下から大勢の生徒が「ワーッ、ワーッ、ワーッ」と騒ぐ声が聞こえてきた。教室も騒然となったが、授業中だから先生にいさめられた。

「SOSが出たんや! まだおる! 皆、見てる!」

 学校中が大騒ぎになった。旧家庭科室の窓の向こうに薄暗いものの、はっきり見える。SOSがいた。黒い目でSOSはこちらを見ていた。

 しばらくして皆は口々に叫び始めた。

「SOS、やめてください! SOS、やめてください!」

 そう唱えると、いつしかSOSは消えていった。

 すべての名称がアルファベットで構成された妖怪は珍しい。多分、日本で初めてアルファベットが使われた妖怪ではないだろうか。

 他の小学校にない事例だと思われ、具体的な事件か事故が発生し、そのリアルな事件や事故が妖怪現象として定着したものであると思われる。