【山口敏太郎オカルト評論家のUMA図鑑#570】蚊と言えば、夏を間近に控えたこの時期、だんだんとその厄介さが際立つようになってくる存在の筆頭だ。世界で最も人類を死に至らしめた昆虫とも言われている蚊は、伝染病を媒介するとして恐れられていることはご存じだろう。
そんな蚊がとんでもなく巨大であったとしたら…聞いただけでもゾッとする話ではあるが、米国・ノースカロライナ州ではそんな巨大蚊の話が伝わっているという。
「アベラスボロ・ガリニッパー」は、羽を広げると鷹ほどの大きさとなるまさしく巨大な蚊であり、黄緑色で毛むくじゃらの体に強力な針(口吻)を持ち、ひとたび吸血されてしまえば、一気に体中の血を抜き取られてしまうとされる。アベラスボロと呼ばれ存在していた州内の地域に端を発した一種の伝説であるが、周辺の町にも同様の話が残っているという。ちなみにガリニッパーは刺す昆虫全般を意味する。
有名な伝承に次のようなものがある。19世紀半ば、アベラスボロの森できこりをしていたレッド・サンダースという男がいた。彼はこわもてで、仲間たちにしばしば武勇伝を自慢げに聞かせていたが、それにうんざりしていた仲間たちが彼にある賭けを申し出た。賭けの内容は、上半身裸で1時間うつぶせのままで虫の痛みやかゆみに耐えられればサンダースの勝ちというシンプルなもので、当然彼はこの賭けを飲んだ。
蚊が多くいる沼地の近くで彼はシャツを脱ぎ捨ててうつぶせになった。その間、多くの虫にたかられた彼の背中はかゆみや腫れに覆われたが、耐え続けた。そして終了まで残り15分と迫ったその時、「ガリニッパーだ!」という仲間の声が響き、その瞬間、彼は背中の猛烈な熱さに耐えきれず沼に飛び込んだ。そして、沼から出たところ、アベラスボロ・ガリニッパーが背中を襲ったと仲間たちから聞かされたという。
以上が大まかな内容となっているが、実はこの話にはオチがある。サンダースの背中を襲ったのは巨大蚊ではなく熱されて真っ赤になった石炭だったのだ。実は、彼に一泡吹かせようという仲間たちの仕込みであり、巨大蚊もでまかせだったのである。
ただし、オチの部分は後に加えられたバージョンではないかとも言われている。しかも、この伝承での時期と同じころ、同州内のケープフィアと呼ばれる地域で、巨大な蚊が目撃されたとの報告があったとされており、存在自体がうそであったかについては判然としていない。
実は、あながち伝承で片付けられない可能性が近年になって出てきたのだ。2018年、ノースカロライナ州で巨大な蚊が大量に繁殖していることが話題となった。学名「プソロフォラ・シリアータ」と呼ばれるこの蚊は、通常の蚊と比べて非常に大きく、人間や動物を執拗に襲う攻撃的な蚊であるという。
その凶暴性はボウフラですらオタマジャクシを捕食してしまうほどであり、寄生虫の媒介などの害はないものの、大きさゆえにその一撃はナイフで突き刺されたような激痛が走ると言われている恐ろしい蚊だ。大きさについては、「普通の蚊の20倍」などと誇張されて触れ込まれてはいたが、それでも2~3倍、一説には6倍もの大きさを有しているという。
もはや巨大蚊は、伝承から現実のものになりつつあるのかもしれない。












