【昭和90年の人々】今年50周年を迎え、幅広い世代から注目を集めるぬいぐるみ「モンチッチ」。販売元である株式会社セキグチの幡野友紀氏へのインタビュー後編では、積極的なコラボ事業の裏側や、令和になって本格化している「昭和レトロブーム」の影響について直撃した。

寅さんとコラボしたモンチッチ「寅チッチ」
寅さんとコラボしたモンチッチ「寅チッチ」

 ――モンチッチが多様なコラボを実現している背景

 幡野 モンチッチ自体が、ぬいぐるみから始まったキャラクターであるということは大きいと思います。もし原作となるアニメや絵本があるキャラクターだと、どうしてもぬいぐるみは〝派生したアイテム〟になってしまいますし、原作の内容から外れることもできません。その点ではキャラクターとしての息の長い活躍に必要な〝柔軟性〟はあると思います。皆さん思い思いの名前を付けていらっしゃる分、どんなモンチッチが世の中に誕生したとしても、理解していただける素地があるのではと感じていますね。

 ――コラボ先にとってもありがたい話ですね

 幡野 コラボの際には相手の希望を反映しつつ、我々から「これができません」と事前に伝えることはなくて。要はNGがほとんどないんです。「この商品はモンチッチが食べられません」のような条件もありませんし、どんな相手にも幅広く対応できるという点はモンチッチの強みだと感じていますね。

 ――今ではさまざまな衣装を着ていますが、モンチッチの原点といえば

 幡野 当初は「くたくたモンキー」の一シリーズ商品でもありましたし、ベースはおさるさんではありました。くたくたモンキーの赤ちゃん版というルーツから、今でもモンチッチはよだれかけをしているんです。ですが先程も触れた通り、キャラクター化をしてからは〝モンチッチ〟という1つの存在だと考えています。他社で展開されている動物モチーフのキャラクターもそうであるように、もう「モンチッチはモンチッチ」とファンの方にも認めていただいているのかなと。

 ――50年の中でデザインを変更しようという声はなかったのか

 幡野 マイナーチェンジということでは、瞳の色をブルーからブラウンに変えたり、毛並みや手触りを変えたりはしていますが、キャラクターとしての外見を大きく刷新しようと思ったことはないですね。少ししもぶくれたお顔とそばかす、そして指をおしゃぶりにするというモンチッチの特徴は、ベースとして大事にしています。

 ――やはりこだわりは強いと

 幡野 新しい層に向けた取り組みは続ける一方で、モンチッチのデザイン自体にはパワーを感じていまして。というのも色を変えて、衣装を変えたとしても、このデザインであればモンチッチと分かっていただけるんです。例えばそこにあるだるまのモンチッチは、もはや顔しか出ていませんが、それでもモンチッチと認識していただけますし。愛されるオリジナルキャラクターを作るのは非常に難しい分、時代に合わせて微調整はしながらも、この姿を長く愛していただきたいと考えています。

だるまの衣装でもモンチッチ
だるまの衣装でもモンチッチ

 ――若い世代はモンチッチをどう受け入れていますか?

 幡野 モンチッチという名前を知っていらっしゃる方は多くて。10代の子たちでも、持ってはいないけれどワードとして知っていたということはよくあります。モンチッチが「髪型の比喩」に使われることは、その理由の1つだと思いますね。前髪をかなり切ったアイドルが「モンチッチ化した」と表現されることもありますから。他にも保育園で「モンチッチじゃんけん」といった遊びが定着していることもあったり、お母さんの実家で見たことがあったりと、接点はさまざまなようですね。

 ――昭和レトロブームの影響も?

 幡野 確かに50周年で露出が増える中で、昭和生まれのかわいいものが1周回ってまた評価されているのは感じています。古くてかわいいということがすごくポジティブに捉えられていると言いますか…。もちろん10代、20代の方が好きな色のモンチッチを作ったりと、買いやすいグッズへの〝落とし込み〟はしていますが、最近は知り合いの学生さんから「最近お店でよく見るよ」と教えていただくこともあって、かなり手ごたえは感じています。

若い世代に向けた色合いのモンチッチも展開(ⒸSekiguchi)
若い世代に向けた色合いのモンチッチも展開(ⒸSekiguchi)

 ――現在は町おこし事業「レトロで元気ッチ!プロジェクト」も展開中です

 幡野 50年やってきたという歴史が、再評価されるようになったことは大きいです。正直レトロブームが話題になった時は、一瞬で終わってしまうのかなと思っていたのですが、もはや文化として定着しつつありますので。ドラマ「不適切にも程がある!」が流行したように、昭和に皆さんが関心を持たれるようになって、「レトロ」というテーマで事業をしようということになりました。

 ――実際にコラボした地域からの反応は?

 幡野 町を支えてこられたベテランの方が、モンチッチをご存じであることがプラスに働いている印象はあります。団体を引っ張っている世代の方が、ブームの話を若い世代に伝えてくださることもありますし、地元住民の方が「私たちの周りにモンチッチを知らない人はいないよ」とありがたい言葉をかけてくださることもあります。それはやはり50年残っていなければなかった反応ですから、つくづく「時間だけは買えない」ということを実感しています…。

花笠まつりに参加したモンチッチ(ⒸSekiguchi)
花笠まつりに参加したモンチッチ(ⒸSekiguchi)

 ――インバウンド需要も大きくなるのでは

 幡野 実は空港でも免税店に並んでいるくらい、海外の方からはかなり評価されているんです。日本とほぼ同時期から海外展開してきたということもありますが、以前は中国で、そして最近ではタイでブレークした実績があります。SNSのフォロワー数が1000万を超えるタイのインフルエンサーの方が、モンチッチの画像を掲載されたことがありまして、そこからタイの方が日本でモンチッチを買うというブームが起きました。

 ――もはや日本の文化にもなりつつあると

 幡野 ちなみにモンチッチは和のテイストを入れた商品も多いんですよ。先程の〝だるま〟もそうですが、招き猫の衣装もありますし、干支にちなんだモンチッチは毎年定番として作っています。今年の干支である〝辰のモンチッチ〟もフロントに飾っているのですが、辰(たつ)と巳(み・ヘビ)はかわいくするのが難しくて…(苦笑)。子・丑・寅・卯まではかわいくデザインできるので、毎回この2年を乗り越えよう、という話はしていますね。

 ――最後にこれからの展望を

 幡野 もちろん今年は記念すべき年ですが、来年からはまた次の50年に向けて動こうと考えています。この1年が盛り上がったから良かった、ということではなくて、モンチッチがこれからもキャラクターとして元気に存在していくことが大事ですから。新しい取り組みの中で得られたものを生かしながら、これからも真摯に歩んでいこうと思います。

☆モンチッチ(もんちっち) 株式会社セキグチが1974年に販売を開始したぬいぐるみおよびそのキャラクター。人形とぬいぐるみを融合した新感覚の商品として話題を呼び、発売当初から大ヒットを収めた。80年代には一時的に国内生産を休止するも、96年に〝再デビュー〟。その後もさまざまなコラボ・プロジェクトを経て、今年誕生50周年を迎えた。