常識外れな「下からのパウンド」はなぜ決まったのか。4日の格闘技イベント「RIZIN LANDMARK 7」(アゼルバイジャン・バクー)で、鈴木千裕(24)がヴガール・ケラモフ(31=アゼルバイジャン)相手にやってのけた前代未聞の大逆転に、〝バカサバイバー〟こと青木真也(40)が鋭くメスを入れた。

 試合終了後の5日午前3時45分、眠い目をこすりながら電話取材に応じた青木は開口一番「大前提として、今回はいわゆるグッドラックだ」と声をしゃがれさせた。

 試合は序盤、ケラモフの片足タックルで、鈴木がテークダウンを許す苦しい展開。だが、下からの蹴り上げでカカトをケラモフの顔面にヒットさせてグラつかせると、背中をマットにつけたまま追撃のパンチを叩き込んで失神させ、1ラウンド(R)1分18秒で逆転のKO勝ちを手にした。

 この蹴り上げのヒットを「幸運を引き寄せた」と表現した青木は、「言ってしまえば、下からの大暴れ。これができるのって、裏返せば何も知らないってことなんだよ」と説明する。

 テークダウンさせられた後、下からむやみな打撃を繰り出して暴れると、さらに苦しいポジションを取られたり、関節を取られて一本負けを喫するケースが多い。

 そのため「そういうリスクがある動きって、格闘技を知れば知るほどできなくなるんだ。でも前回(KO勝ちした7月のパトリシオ・ピットブル戦)も含め、鈴木さんにはそれを迷わずできる『格闘技を知らない強み』がある。鈍感力というか天然というか少し抜けているというか…。それがたまに裏目に出てクレベル(コイケ)戦とか昇侍戦とか〝ママ活騒動〟みたいなことになるのが玉にきずだけど」とメガネを光らせた。

 何はともあれ、その強みで稲妻のごとき一撃をヒットさせ、ベラトール王者のパトリシオ戦に続く劇的勝利を手中に収めたのは事実。青木は「一生懸命やることで運を味方にしたのは立派だ。今の鈴木さんは、マリオでいえばスターを持っている状態だよ」と指摘する。

 その上で、今後期待される金原正徳とのV1戦について「俺だったらまだ組まないな。やったらクレベルと同じで〝はがされる〟から」と独特の言い回しでクギを刺す。そして「それこそ一回、平本蓮とか皇治とかとやらせて、さらに箔をつけるのがいいと思う」と提案した。

 また同大会でトフィック・ムサエフ(アゼルバイジャン)に3R2分3秒でTKO負けを喫した武田光司(28)については「最高ですよ」と称賛の言葉を贈る。

 終始相手の打撃を受けながら戦い続けた姿勢に「もう、勝敗を超えたところで戦っているというか。そういう相手に、ああいう戦いでアップセットを狙い続けるんだろうね。まさに糸井重里の徳川埋蔵金だ。俺から言えるのは『自分の心の折り方が知りたかったらいつでも教えるよ』ってことだな」と妙なアドバイス。最後に「今回思ったのは、みんな頑張ってるなってことですよ。MMA(総合格闘技)は若い人のもんだな、と改めて思ったなあ」としんみりと口にした。

 だが、これで終わりかと思えば「それはそれとして、YA―MANと朝倉だけど…」。未明のトークは続く。