【1・5時間博物館・印刷博物館】親子や祖父母と孫で気軽に、そして1時間半で見学できる博物館を紹介する夏休み特別企画「1・5時間博物館」。大きな博物館だと見学時間の長さや入館料・グッズのお値段に大人がぐったりしてしまうことありますが、その点でも安心なアクセス抜群の都内3か所をピックアップします。

 初回は「印刷博物館」。大手印刷会社の凸版印刷(以下トッパン)が運営している、「印刷」にまつわる展示を集めた博物館の見どころと魅力を〝博物館大好き記者〟がお伝えします。子供の自由研究が終わっていない家庭にもうってつけ!

「印刷博物館」はトッパンの本社ビルにあるということもあって、展示室は地下に広がっていました。エスカレーターを降りて向かうという構造はいかにも子供ウケしそうです! チケット売り場も百貨店のようで、普段博物館を訪れない方でもテンションが上がると思います!

博物館はシックな外観です
博物館はシックな外観です

 展示の入り口ではベルギーの博物館にあるものと全く同じという、17世紀の形式の印刷機のレプリカがお出迎え。活版印刷の発明者であるグーテンベルクの肖像を印刷する実演も行われているそうですよ。

木製の手引き印刷機がお出迎え
木製の手引き印刷機がお出迎え

 ちなみに「活字」というのは印刷のために使われている凸型の字型のこと。こちらを印刷したい文章等に合うよう並び変えて印刷するという方法が「活版印刷」ということになります。普段〝活字離れ〟といったニュースを目にしながら、元々の活字の意味を知らなかった方、実は多いのではないでしょうか…?

 常設展は印刷の日本史、印刷の世界史、印刷×技術の3テーマで展開され、特に日本の資料が非常に充実しています。冒頭で展示されている印刷年が分かる世界最古の印刷物「百万塔陀羅尼」は必見。歴史にロマンを感じる方々にはたまらないでしょう!

世界最古の印刷年が分かる印刷物「百万塔陀羅尼」(画像提供:凸版印刷株式会社 印刷博物館)
世界最古の印刷年が分かる印刷物「百万塔陀羅尼」(画像提供:凸版印刷株式会社 印刷博物館)

 また、日本では徳川家康のような〝天下人〟が活版印刷を導入してはいたのですが、コスト面や使い勝手の良さから木版印刷が主流だった時期が長かったそう。その中で浮世絵のような江戸らしい文化が豊かになっていたということも、歴史の奥深さを感じます。

 東スポ社員の私は江戸の火事を伝える瓦版を見て勝手にシンパシーを覚えましたが、来場された方も近世の資料のどれかには「見たことある!」となるはず。有名な葛飾北斎の「神奈川沖浪裏」の刷り方も複製された版を用いて紹介されていて、歴史的名画ができあがる様子を鑑賞することができますよ。

 その一方で、銅版や石版といった印刷形式も江戸~明治にかけて導入されたとのこと。杉田玄白と前野良沢が翻訳した「解体新書」も、木版から銅版になったことで人体のリアリティーがぐっと増したことが展示で分かります!

 また、時代が現代に近づくにつれ、展示には今も刊行されている新聞や雑誌も登場。印刷が日常に入り込む中で、街中に色鮮やかな広告が増えていったことも説明されています。技術革新に合わせて文化が華やかになっていく様子が視覚的に理解できるという点も、こちらの博物館ならではの魅力かもしれません。

 取材の最後には、展示室に併設されている印刷工房も見学しました。こちらでは様々な年代の印刷にまつわる機械に囲まれながら、コースターやはがきなどに好きな文字を活版印刷する体験ができます。夏休みの思い出作りにピッタリですし、なにより見学の後に〝モノ〟が残るというのがいいですね! 8月25日までは夏のワークショップとして、ノート作りやポップアップ絵本作りといった特別な体験も用意されています。こちらは全て事前予約制なので、詳細は公式ウェブサイトをチェックして見てください。

印刷工房の存在も魅力の1つです
印刷工房の存在も魅力の1つです
活版印刷体験では好きな文字を組み合わせて印刷できます
活版印刷体験では好きな文字を組み合わせて印刷できます

 そして工房の奥には、膨大な量の活字が棚に陳列されていました。活字を並べていた当時の職人さんも、この〝文字の海〟の中から必要な漢字やひらがなを選ぶ、「文選(ぶんせん)」という作業を行っていたそうです。活字は使用頻度の高い順に「大出張」「小出張」「第2出張」…ときちんとグループに分けて詰め込まれていて、職人さんの仕事に対するこだわりやプライドがひしひしと感じられました。

「文選」の作業。大量の活字が分類されて置かれています
「文選」の作業。大量の活字が分類されて置かれています

 一方で昔は文章1つ印刷することも大変だったんだと思うと、記者としては冷や汗が出たのも事実です…。今回の原稿もパソコンでカタカタと作成しましたが、締め方を1つ変えるだけでも職人さん方はてんやわんやだったはず。そう考えると印刷業の方にはやはり頭が上がらないですね。

 今回館内をご案内いただいた印刷博物館の前原さんは、「本や新聞は分かりやすいですが、他にも生活の様々な場面で印刷が使われているんです。この博物館で身近な所に印刷物があるということを感じていただけたらうれしいです」とアピールされていました。印刷の歴史、そして文化の豊かさを感じられる「印刷博物館」、ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか?

【印刷博物館】東京都文京区水道1―3―3。飯田橋駅から徒歩13分。「印刷」をテーマとした博物館で、開館時間は10時から18時(入場は17時半まで)。休館日は月曜日、年末年始、展示替え期間で、入館料は一般400円。中学生以下及び70歳以上は無料。

 公式HPは【https://www.printing-miseum.org/】。