――表題作「ごっこ」は“恋愛未満”の関係の男女が逃避行する物語で、恋人ごっこが思わぬ暴走を巻き起こす逆転に読み応えがあった
紗倉 ありがとうございます。最初は情緒不安定なモチノくんの感情が爆発することを主人公ミツキが恐れているんですが、車の中に2人だけという逃げられない密閉空間でミツキの怒りの火種に火がつくところを書きたかったんです。やっぱり閉ざされた空間って、感情の逃げ場がないからおかしくなりますよね。
――具体的な車種名が記されたり、車へのこだわりを感じられる
紗倉 なんか気になって車が出てきちゃうんです(笑い)。ミツキも私も人からなめられやすいところがあって、この近しさを車で表すと軽自動車なんですよ。でも、いかつい四駆とかだったら後ろの車からあおられないし、そういう意味で武器となる車を操って対抗したいと考えている部分があるんです。
――私生活でも車好き?
紗倉 そんなに詳しくはないんですけど、見るのが好きで、「18歳になったら免許を取っておきなさい」と母に言われましたし、車がないとスーパーに行くのも大変な田舎だったのですぐ(免許を)取りました。今も気分転換にドライブするようにしていますし、「ごっこ」の中に出てくる東名高速の跨道橋に掲げられた「子育て王国 大和市」とか「七十代を高齢者と呼ばない街 大和市」といった標語はグッとくるなと思って、執筆中にハイになって書いてしまいました(笑い)。
――ネタバレを防ぐために詳細は省くが、ラストはどうしてタイヤ音を余韻に残したのか
紗倉「どっちなの?」と聞かれることが多くて最初はフフフと返していたんですけど、東スポさんにはできるだけ答えたいので…そうですね。モチノくんが握っていた主導権が完全にミツキに移っていて、ミツキが鉄の塊を操っていることを知らしめることができればいいなと思って、あのラストになっています。ぜひ本編を読んでいただいて、感想を教えてください。
(このインタビューに収まりきらなかったエピソードを後日、東スポWEBで配信予定です)
【担当編集者の目】「恋愛小説」の甘いイメージからはかけ離れた、とことんダメな恋愛ばかりが描かれる本作。紗倉さんならではの鋭い観察眼と、切実なのに思わず笑ってしまうユーモアが魅力です。男性読者には、ぜひ複雑な女性心理を理解するためにお読みいただきたいです。(講談社文芸第一出版部・見田葉子)
☆さくら・まな 1993年3月23日生まれ、千葉県出身。2012年2月にSODstar専属女優としてAVデビュー。16年「最低。」で小説家デビュー。「春、死なん」は20年度野間文芸新人賞候補作で話題となった。













