「脱いでなんぼ! 笑ってなんぼ」――。たけし軍団の一員として裸芸で日本中を沸かせた井手らっきょ(65)は故郷・熊本でカラオケスナックのマスターとして第2の人生を満喫中だ。裸モーニングにパンイチでバージンロードを歩き、名球会の面々を前に全裸ダイブを敢行するなど、師匠・ビートたけし(78)の下で体当たり芸に挑み続けてきた。伝説の「裸芸人」が波瀾万丈すぎる芸人人生をたっぷり語った。

娘の結婚式でバージンロードを歩いた(本人提供)
娘の結婚式でバージンロードを歩いた(本人提供)

 ――師匠のビートたけしのそばで長年活動してきて一番学んだこと

 井手 やっぱり「人への思いやり」です。芸の技術よりも、人としてのあり方をたけしさんから学んだ。例えば新幹線で移動中でも、ファンに「写真撮ってください」って言われたら絶対に断らない。「いいよ、やるよ」って自然に応じる。それをマネジャーが「時間が…」と止めようとしても「いいんだよ、俺がやるから」って。そういう姿勢をずっと見てきた。

 ――芸人としての厳しさも教わったのか

 井手 はい。昔、バブルの時代に番組の打ち上げでくじ引きがあって、若手の芸人が景品を当ててもらっちゃって。そしたら、たけしさんが「お前バカか。これはスタッフのための打ち上げだぞ。お前らが当たってどうすんだ。(当たっても)黙っておけ!」って烈火のごとく怒って。スタッフが主役、われわれは縁の下の力持ち。そんな信念がある方なんです。

 ――テレビでは破天荒なイメージがあるが、実際はきっちりしている

 井手 本当に常識人です。ただ、どこにいても笑いは忘れない。軍団の宴会でもすごかったですよ。飲んでて先に寝たら負けの暗黙のルールで、寝てしまったら朝にはポロシャツの下半分が切られてて、起きたら「ブラジャーみたいになってるじゃん!」って(笑い)。で、そのまま集合場所へ「おはようございます」。みんな笑ってくれて、そういう“いじられ役”を僕はずっとやってきました。

 ――井手らっきょといえば、やっぱり「裸芸」のイメージ

 井手 たけし軍団のコントでも、最後は僕が脱いで締めるのが定番。「そろそろだな」と感じたら、自分で察して脱ぐ。誰に指示されたわけでもなく、空気を読んで。それが僕の役目でした(笑い)。

 ――脱ぐべきか…と、悩んだ場面は

 井手 ありましたね。たけし軍団がプロ野球の名球会と真剣勝負の野球をした時、そのエンディングで迷ったけど「ここしかない!」と決心して、素っ裸になってタオル1枚で登場し、そこにあった酒だるにお風呂に入るかのように肩まで漬かったんです。金田正一さんに「バカヤロー!」って怒鳴られましたけど、現場は大爆笑。それが伝説になって、あの判断は間違ってなかったと今でも思ってます(笑い)。

 ――現在は熊本でカラオケスナックを経営しているが、芸人と通じる部分もある

 井手 大いにあります。来てくれたお客さんを楽しませたいという気持ちは今も変わらない。県外から来る方も多くて「井手らっきょに会いたくて来た」って。そう言われると本当にうれしい。満席になった時は、獅子舞パンツ一丁で歌いながらのショータイムもやってます(笑い)。

 ――裸芸人としての半生を振り返ると

 井手 僕には娘と息子がいて小さい頃はどう思ってたか分からないけど、大人になってから聞いたら「誇りに思ってる」って。めちゃくちゃうれしかったですね。昔は「うるせーよ、井手らっきょのくせに!」って反抗もされましたけど(笑い)。今ではリスペクトしてくれているようで。

 ――娘さんの結婚式でも、まさか…

 井手 そう! 娘から「いつも通りで来て」って言われて。モーニングにネクタイ、下は獅子舞パンツ姿でバージンロードを歩きました(笑い)。牧師さんも「ブラボー!」って言ってくれて最高の式になりましたよ。

 ――芸人として迷った時期、師匠から励ましをもらったことは

 井手 ありました。もともと僕はモノマネ芸人だったけど、伸び悩んで円形脱毛症になってしまって…。そしたら、たけしさんが「いっそ頭をそっちゃえ!」って。その一言で「井手らっきょ」のキャラが生まれた。今があるのは、あのたけしさんの一言のおかげ。

 ――師匠の“愛ある厳しさ”が井手さんを支えていた

 井手 本当にそうです。だから、僕は絶対にたけしさんの名前を汚すようなことはしない。軍団の一員として、警察沙汰なんて絶対にありえない。ずっと自分にそう言い聞かせて生きてきた。

 ――たけしさんから言われて、今でも覚えている言葉は

 井手「こんなバカ見たことねえな」って(笑い)。でも、それが最高の褒め言葉、一番の勲章なんです。くだらないことを本気でやる。それが笑いを生むんですよ。

 ☆いで・らっきょ 1959年12月11日生まれ。熊本県出身。ものまね芸人を目指し、久留米大学商学部を中退して上京。西城秀樹、水谷豊のものまねで注目される。たけし軍団の草野球に参加中、ビートたけしから打診され、軍団入り。裸芸を武器にバラエティー番組で活躍。2018年から活動拠点を熊本に移す。スポーツ万能で知られ、短距離走100メートルのベストタイムは10秒89。