「宇宙戦艦ヤマト」「銀河鉄道999」などの作品で知られる漫画家の松本零士(本名晟=あきら)さんが、13日に急性心不全のため都内の病院で死去したことが20日、明らかになった。85歳。福岡・久留米市出身。生涯を通して子供たちの夢の力を信じ、「未来は変わる」と主張。老いてなお、自身も夢をあきらめず「火星で漫画を描きたいんだ!」と目を輝かせていた。

 松本さんは6歳のころから絵を描き始め、高校在学中の1954年に「蜜蜂の冒険」でデビューした。71年に雑誌で連載を始めた「男おいどん」で、東京の若者の貧しい下宿生活を描いて人気を獲得。少年、青年漫画で活躍するようになった。

 代表作は「宇宙戦艦ヤマト」「銀河鉄道999」「宇宙海賊キャプテンハーロック」など。いずれもテレビでアニメ放送された。果てしない宇宙を舞台にした壮大な作品が多く、それは生涯を通して子供たちの夢や未来を信じ続けていたからにほかならない。

 少年少女の教育的な活動にも尽力した。94年9月には、次世代を切り開く「宇宙時代の地球人」を目指して科学工作、実験、自然観測、天体観察、野外活動、社会貢献活動などを行う日本宇宙少年団(YAC)の理事長に就任。2021年6月に辞任するまで約27年間、宇宙の魅力や可能性を子供たちに伝えた。

 YACの理事長を引き継いだ宇宙飛行士の山崎直子氏はこの日、ツイッターで「『未来は少年少女の心の中にある』と仰っていた先生の想いを繋いでいく所存です」と追悼。宇宙飛行士の星出彰彦氏は山崎氏の投稿をリツイートし「子供時代に触れた作品の数々が、宇宙に行く夢を育んでくれました」などと感謝した。

ゴダイゴの40周年イベントに出席した松本零士さん(2016年)
ゴダイゴの40周年イベントに出席した松本零士さん(2016年)

 もっとも松本さん自身も老いてなお、夢をあきらめず、最期までふくらませ続けていたという。

 松本さんと仕事をしてきた出版関係者の話。

「子供のころから夢を描き続け、将来を予想して作品を描いていました。70歳を過ぎても夢への探求心は衰えなかった。大好きなお酒を飲みながら『死ぬまでに火星で漫画を描きたいんだ!』と熱っぽく語ることもあって。子供たちに夢の大切さを訴えるなら、誰よりも自分が夢を見るべきというポリシーでした」

 晩年、多くの取材で明かしていたのは「今ごろ、火星にいるはずだった」という少年時代に描いていた夢だ。

「銀河鉄道999」主人公の星野鉄郎を「自身の分身」と語るなど、宇宙旅行の願望も周囲にたびたび口にした。19年11月、イタリアで行われた「宇宙海賊キャプテンハーロック」のイタリア放送40周年記念イベントで倒れ、一時は集中治療室に。翌12月に帰国した後に体調は回復したというが、最近になって体調を崩し、都内の病院に入院していたという。宇宙旅行の夢は叶わなかった。

 葬儀・告別式はすでに近親者のみで執り行われ、お別れの会を後日、開く予定。宇宙の力、子供の力を信じ続けた松本さんの夢は少年少女たちに託された。