元自衛官で陸上自衛隊郡山駐屯地に所属していた当時、複数の男性隊員から性暴力を受けた五ノ井里奈さんが30日、東京・内幸町にある日本記者クラブで会見を行い、加害男性隊員5人(当時)に精神的苦痛を被ったとして連帯で550万円、国に対して安全配慮義務違反で200万円の損害賠償を求める訴訟を横浜地裁に起こしたと明らかにした。

 事件が明るみになってから、防衛省や加害男性隊員らは五ノ井さんに謝罪。加害男性隊員5人は懲戒免職となり、そのうち3人は強制わいせつ容疑で書類送検されていた。その後、書類送検された3人の加害男性隊員から示談の申し入れがあり、示談交渉を進めるべく「加害行為をどう受け止め、どう責任をとるのか」と質問して回答書を待っていたが、これまでに回答はなし。

 さらに公務員が職務中の不法行為で他人に損害を与えた場合、国や公共団体が賠償するとの国家賠償法を念頭にした加害男性隊員側の弁護士から、「公的責任を取れるかどうかわからない」との発言があったという。

 これに五ノ井さんは「本当に反省しているのかどうか伝わらない。反省していないと感じるし、このままではハラスメント等の根絶は不可能じゃないか」と主張し、「お互いの主張に食い違いがあるので、それならオープンにして明確にする必要があるんじゃないかなと思った」と、訴訟に踏み切った事情を明かした。

 自衛隊員は公務員のため、基本的に国賠法によって公務中の不法行為によって生じた責任は国が負うことになるが、五ノ井さんの弁護士は「今回は公務ではなく違法性も非常に高いもの。そのため個人が責任を負うべきと追求している」と説明している。

 五ノ井さんは「誰かと争うことは本当に抵抗がすごくありました。できることなら私としては戦う選択をしたくなかった」と心境を吐露。その上で「自衛隊は好きなので、もっとひとりひとりが大切にされて、正しい正義感を持った隊員や組織になってほしいと思ってます」と、訴訟を起こす意義を主張した。