「前忠(まえちゅう)」の愛称で親しまれた芸能リポーターの前田忠明(まえだ・ただあき)さんが9月、くも膜下出血のため都内の病院で亡くなった。81歳だった。「仏の前忠」とも称され、ジャニーズタレントの謝罪会見では〝ゲームチェンジャー〟として振る舞い、市川海老蔵(当時)のイメージ失墜を救ったという。前田さんが長年活躍したフジテレビ系「とくダネ!」の元リポーターが明かした。

 前田さんは9月28日、東京・新宿区の自宅マンションで転倒し、救急搬送先の病院でくも膜下出血のため亡くなったことが19日、明らかになった。

 フジと専属契約を結び、芸能リポーターに転身。フジ系情報番組「おはよう!ナイスデイ」「とくダネ!」などで40年にわたり活躍し、軽妙な語り口で芸能情報を解説した。

 同じく芸能リポーターとして活躍した梨元勝さん(享年65)と比較され続けた。梨元さんがタレントへの直撃取材でスクープを奪取するタカ派なのに対し、前田さんはタレントや芸能事務所とパイプを築いてウワサの真相に迫るハト派。「鬼の梨さん、仏の前忠」とも称された。

 その姿勢は、ジャニーズ事務所のタレントがかつてスキャンダルを起こした際の謝罪会見で表れた。「とくダネ!」で前田さんと長年共演した同番組元リポーターの話。

「ジャニーズタレントのスキャンダルが起きた直後、ジャニーズに対する〝忖度〟からフジ局内で『番組で触れたくない』との空気が流れました。ただ、前田さんは『扱うべき』と説き、ジャニーズにも根回しして仁義を切りました」

 番組で扱う代わりに、そのタレントの謝罪会見では温情を見せた。

 前田さんは、他局のリポーターからジャニーズタレントに厳しい質問が続くと予想し、「とくダネ!」のリポーターに会見の空気がソフトになるような質問をするよう指示。会見に送り出されたリポーターはそれを守ってソフトな質問を投げかけ、場の空気が変わったという。

「会見で厳しい質問攻めに遭う姿が各局ワイドショー番組で放送されれば世間からの印象はさらに悪くなり、タレントが復帰しづらくなる」(前出リポーター)ため、ソフトな質問を入れ込んで場の空気を一変。ゲームチェンジャーとして会見をコントロールし、復帰につなげようとしたわけだ。

 歌舞伎役者の市川海老蔵(今年11月に十三代目市川團十郎を襲名)が、複数の女優と浮名を流してイメージが失墜しそうだった時には、それを笑いに昇華させた。

「前田さんは『とくダネ!』で、海老蔵さんと浮名を流した女優たちを『エビージョ』と紹介しました。海老蔵さんの『エビ』と、モテる女性を指す『アデージョ』を組み合わせた造語です」(同)

「とくダネ!」のMCの小倉智昭は「エビージョ」という表現に爆笑。お茶の間に流れる海老蔵の印象を柔らかくした。

 天国にいる名優たちも名物リポーターと顔を合わせ、「あの時はどうも…」と笑うに違いない。