サッカーW杯期間中にスクランブル交差点の安全は保たれるのか――。先月のハロウィーンで多くの人が詰め掛けた東京・渋谷のスクランブル交差点が、突然現れた“花火男”によって恐怖に陥れられた。

 14日午後10時過ぎ、歩行者信号が青になると、大勢の通行人とともに渋谷駅方向からスクランブル交差点に男が進入。交差点の真ん中付近で立ち止まると、持っていた打ち上げ花火に火をつけて上空や周囲に向かって“乱射”し始めたのだ。歩行者信号が赤に変わっても男は交差点に居座って車の通行を妨害。拡声器を使って大声を上げていたという。

 通行人に向けられた花火は勢いよく火花を散らして四方八方へと飛び、ツイッターにはあわや直撃の動画も多数投稿されている。この騒ぎで警官が出動し、男は取り押さえられた。

 弁護士法人プロテクトスタンスの菊入誠一弁護士によれば「通行人にケガがなかったとしても今回のケースでは暴行罪の可能性が高く、また交差点で車の通行を妨げた行為は道路交通法違反となります。もしケガをさせていれば傷害罪になる」という。

 渋谷のスクランブル交差点では、先月23日にも刃渡り約9センチの刃物を持った男が拳銃を奪う目的で警官を襲う事件が発生している。渋谷センター商店街振興組合事務局の小野寿幸理事長は、20日に開幕するサッカーW杯に向けて「怖いのは突発的なローンウルフ型テロ」と警戒を強めていたが、W杯開幕を前に早くも懸念していた事態が起こってしまった格好だ。

 今回、通行人に向けられたのは打ち上げ花火だったが、これが銃だったらとんでもない惨事になっている。かといって「大勢の人が集まる雑踏で、一律に持ち物検査をするのはプライバシー権の観点からも現実的にも難しい」(同)

 W杯はカタールで12月18日まで開催。開幕すればスクランブル交差点がごった返すことが予想されるが、同様の事件が起こらないことを祈るばかりだ