【前田日明(23)】 1990年になっても新生UWFの好調は続いたんだけど、複雑だった。いつまでも神(真慈社長)たちは帳簿を見せないし「こいつら会社を乗っ取ってるのかな」と疑心暗鬼で試合をやっていた。俺の給料はUWFが一番良かった時でも月120万。でも神と鈴木(浩充専務)は俺に秘密で月200万~300万とかもらってたんだよ。

 19歳くらいだったころ、新日本プロレスに巨悪営業マンがいて、ルイ・ヴィトンのアタッシェケースを当たり前のように持ち、都内に一軒家を建てたりしていた。なのに選手たちの家は建ってない。おかしいじゃん、そんなの。UWFをつくる時に「そういうのやめような」って。神たちも「そうですね」って言ってたのに、何やってんねんって話でしょ。

 この年はメガネスーパーがSWS(※1)を設立し、プロレス界での影響力を強めていた。たぶん神たちは会社を売ろうとしていたんだ、メガネスーパーに。プロレスってすごくもうかるんですよ、UWFを買ってやれば「もっともうかりますよ」ってところ。それで彼らは、売り抜けて、とんずらしようとしたんだろうね。

 UWF選手のSWS移籍も騒がれていた。でも俺としては、神たちのもくろみに乗っちゃうことになるから絶対に許せないことだった。みんなを食わせるためにやってるのに、なんで俺らをだましてるやつらに「大金をつかまさせなあかんの」って話だよ。新日本との業務提携時代も収入がないから、ポスターとかグッズを作って高田(延彦)と山ちゃん(山崎一夫)にサイン会やってもらって、そのカネを彼らの給料に充てていたのに。

 我慢の限界だった俺は10月25日大阪城ホール大会で、船木(誠勝)との試合後に公の場でフロントを批判した。事務所と仕事を否定はしないよ。でも興行収支を聞いても帳簿の開示もない。「会計事務所にやってもらっているから帳簿もありません」って言うんだけど、そんなわけないじゃん。いつかは進展するだろうと思っていたけど、ラチがあかない。あの2人に対し「もう信用できない」と思ったんだ。

 表立って告発をしたら「すみませんでした」と来るのかと思っていたら、俺に5か月の出場停止処分が下された。あの時、フロントが歩み寄ってきたらUWFを続けるつもりだったんだけど、彼らに対し気持ちが切れた。ダメだ、こいつら、詐欺師、カネの亡者だなって。彼らとしては会社の権利は自分たちにあって、選手はただの契約者。裁判しても「問題ない」という気持ちがあったんだろうね。

※1天龍源一郎をメインにしたプロレス団体、92年に活動停止

☆まえだ・あきら 1959年1月24日生まれ。大阪市出身。78年8月に新日本プロレスでデビュー。84年に第1次UWFに参加後、88年に第2次UWFを旗揚げ。91年にはリングスを立ち上げた。99年2月に「霊長類最強の男」と呼ばれたレスリング五輪3連覇のアレクサンダー・カレリン(ロシア)との一戦で現役を引退。その後も海外との人脈を生かして数々の強豪を招聘した。2008年3月からアマチュア格闘技「THE OUTSIDER」を主宰。192センチ、現役当時は115キロ。

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