オカルト評論家・山口敏太郎氏が都市伝説の妖怪、学校の怪談、心霊スポットに現れる妖怪化した幽霊など、現代人が目撃した怪異を記し、妖怪絵師・増田よしはる氏の挿絵とともに現代の“百鬼夜行絵巻”を作り上げている。第106回は「人食い石」だ。

 これは、某地方の消防団員の話である。その一帯の森で行方不明になった人は全員、「人食い石」に抱きつくような格好で遺体として発見されるという。ほぼ全員が眠るように亡くなっているそうだ。人食い石はまるで人肌の体温を奪うかのように温かくなっているらしい。

 このように、人を自由に操ってしまう石の妖怪は数例、確認されている。

 有名な千葉県市川市にある「夜泣き石」は、戦国時代の北条氏と里見氏の合戦跡にある奇石であり、父親の死を悲しんだ姫君の怨念がこもっていると言われている。

 多摩地方にある「呼ばわり石」は、まるで人間のように返事をすると伝えられている。

 また、筆者の出身地である徳島県にある「おっぱしょ石」は、毎晩毎晩通り掛かる人に「おっぱしょ、おっぱしょ」と話しかけ、おんぶをせがむという。

 このように石の妖怪は、人間のようにしゃべったり、人間のような活動をして人々を惑わすことがある。石はひょっとすると人間の感情を記憶することができる、ある種の媒体なのかもしれない。