一時期「体にいい」と水素水がもてはやされたことがあるが、科学的根拠がない、販売方法が問題などと叩かれてブームは去ったかのように思われた。だが、ここに来て急激に水素関連商品の人気が高まっているという。なぜ再注目されたのか、専門家に尋ねた。

【水素吸入で救急診療】

 水素には抗酸化作用があるとされる。酸化作用の強い活性酸素が引き起こす老化や体調不良などを防ぐ作用があるとされている。

 健康のために水素を取るには、かつては水素を含む水素水を経口摂取するのが中心だった。だが最近では、発生させた水素を鼻や口から吸引する水素ガス吸入が人気の中心になっている。吸入のほうが、より多くの水素を体内に吸収できる。この水素吸引器が、水素関連商品の潮目を変えたそうだ。

「私どもは水素発生装置、水素吸引器を中心とする専門商社ですが、31年ほど関連業界の製品を手掛けてきた中でも水素吸引器の人気ぶりは急激な右肩上がりで、これからさらに伸びる予測です」

 こう話すのは、医療器具商社ユーピー(横浜市旭区)の橋本克之社長だ。同社は水素吸引器から発生する水素濃度測定や、水に溶けた水素濃度の測定などの専門的技術を持っており、「水素吸入が大きく注目されたのは、2016年に厚生労働省から先進医療として認可されたから」だという。

 救急診療などにおいて心停止後症候群にある患者に対し水素ガスを酸素とともに吸入することにより、心停止による脳の酸素不足ダメージを水素によって軽減して回復させる。この水素吸入療法が厚労省から認可されたのだ。

 それを機に水素吸入が注目を集め、その後、各メーカーが水素吸引器を続々と登場させるようになっている。

【多くの医療機関が水素療法を採用】

 水素吸入は活性酸素を消去するため末期がん等の診療にも採用されるようになった。そのほか、自律神経のバランスを整えて血圧を下げる効果から循環器疾患に効果があるとの研究結果も発表されている。ある調査によれば、水素吸入、水素点滴などの水素療法を導入する医療機関は全国500施設以上で、さらに増加中とされる。ちなみに水素先進国と言われる中国では、中央政府から医療認可を受けてコロナウイルス感染症の治療目的に水素吸入が使われており、日本はむしろ後追い状況にある。

 こうした医療現場での導入が水素吸入の認知度を高め、一般にも水素吸引器が導入されやすくなったとみられる。健康経営を目的に水素吸引器を導入する大手企業も増加してきた。

 製品価格はメーカーによりさまざまだが、おおむね数十万円程度と、それなりに高額だ。しかし橋本社長によれば、「当社の納入先は医療機関の診療用、大手企業や官庁の福利厚生用、大学など研究機関の研究用などが中心です。最近は個人の一般ユーザーも多くなっています」とのこと。

 次回は人気の中心になっている水素吸引器の選び方を尋ねる。