【アツいアジアから旬ネタ直送「亜細亜スポーツ」】タイ・バンコクを流れるセンセープ運河で5日午前6時半ごろ、地元民の足になっている運河ボートが突如爆発し、67人が負傷した。ボートのエンジン4か所から燃料のガスが漏れて引火したとみられ、現地メディアはボート運営会社の整備不良の可能性を指摘している。
渋滞がひどいバンコクでは、こうした水上バスが重宝する。しかも現場の運河は“渋滞地獄”スクンビット通りと平行しているため使い勝手もいい。よく利用する現地採用日本人の解説。
「現場は運河の東部、ラムカムヘンという地域。サッカー日本代表が試合したスタジアムやマンモス大学があり、若者の街として活気がある。ただ日本人がまとまって住んでるのは、ラムカムヘンより西のエリア。日本人学生が1人巻き込まれたが、爆発がもっと西で起きてたら多くの日本人が被害に遭っていたかも」
事故当時の監視カメラ映像を見ると、船尾から黒煙がモクモク、炎らしきものも上がっているのに、船着場の乗客は平然とボートに乗り込んでいる。爆発はその数秒後だった。「普段からあんな感じで煙を吐いてるボートなんで、あまり疑問に思わなかったのかもね」(前同)とは恐ろしい話だが、そもそもバンコクの運河は水質汚染がひどく「死の運河」と呼ばれ、市民に恐れられている。
この日本人は「ボートに乗る時、運河の水しぶきがほんの少し目に入っただけで結膜炎になった」という。悪臭もひどく、ハンカチで鼻や口を覆う女性も目立つ。汚水を避けるためボートはビニールで覆われているが、それでも完全に水しぶきを防げるわけではない。実際に人が死んでいる。
地元人気アイドルグループ「D2B」メンバー・ビッグが2003年、運転中に車ごと運河に落ち、汚水を大量に飲み込んでしまった。彼はその後、悪性の細菌が脳にまで達し、昏睡状態に。なんと4年に及ぶ闘病もむなしく、25歳でこの世を去った。この一件で「汚染運河」は社会問題化し、浄化作戦も進められたが、効果は上がっていない。逆に、水質の危険度はさらに増しているという声も。
バンコク北郊・アユタヤの工業団地に勤務するメーカー社員が言う。「5年前の大洪水でアユタヤ周辺の工業団地が軒並み浸水し、日系企業も大損害を受けた。これらの工場で管理が甘かった所から、工業排水や人体に害のある化学物質が大量流出したといわれてる。それらが流れ着いた先は下流の運河。センセープ運河も相当ヤバイんじゃないか」。日系企業の中には、駐在員やその家族に運河ボートの利用を自粛するよう求めるところもあるという。
かつては「東洋のベネチア」と呼ばれるほど水上交通が発達していたバンコク。だが今は運河の埋め立てが進んで道路となり、残った運河は水質汚染が進むばかりなのだ。
☆室橋裕和(むろはし・ひろかず)=1974年生まれ。週刊文春記者を経てタイ・バンコクに10年居住。現地日本語情報誌でデスクを務め周辺国も飛び回る。2年前に東京へ拠点を移したアジア専門ライター。












