老化は脚力にまず現れる。しかし、できることなら年を取っても自分の足で歩きたいもの。正しい姿勢で美しく歩けば100歳まで自分の足で歩くことができるそうだが、どうすればいいのだろうか? 生涯自分の足で歩ける方法を指導している専門家に聞いた。

【留意すべきは…】「誰でも自分の足で長く歩きたいはずです。そのために、自分でケアしながら人生の最後まで自分の足で歩くことを目的としたメソッドがケア・ウォーキングです」と話すのは一般社団法人ケア・ウォーキング普及会代表理事で健康運動指導士の黒田恵美子さんだ。

 黒田さんは病院や自治体などで健康寿命延伸のための身体運動の必要性を啓蒙し、「いたまず・健康で・うつくしく」をスローガンに生活習慣病、介護、ロコモの予防改善に役立つ運動指導や講演を行っている。「一生歩ける体になる黒田式ケア・ウォーキング」など著書も多い。

 人生の最後まで自分の足で歩くために効果的な運動を実践するには、基本の理論を理解することが必要だという。

「日常生活では、まず立ち姿勢や生活の中の動作の仕方、歩き方に留意することです。一方で、身体のパーツを理解しながらエクササイズやセルフケアをするようにします。その両輪によって、ヒザ、腰、足などの関節痛を防いでいくことを重視しています」(黒田さん)

 具体的には立ち方や歩き方の基本を意識してほしいそうだ。正しい立ち方はこんな姿勢である。

 顔は正面を向き、足裏の真上に骨盤・胸郭・頭が乗っている。背骨はS字カーブを描き、肩甲骨の辺りの背骨は少し丸みを持って、おへその後ろ辺りは反っている状態だ。そして足を閉じたときに、もも、ふくらはぎの間がくっついている、というのが理想の立ち姿勢だ。

 美しい立ち方ができると身体が引き締まり、必要な筋肉がついてくる。逆に、良くない立ち方を続けると間違った姿勢のままで運動をすることになり、姿勢のゆがみがひどくなったり、首や肩のこり、関節痛を起こす原因になったりする。歩く前や運動の前には必ず姿勢チェックをする習慣をつけるといいそうだ。

【老化予防にも】その上で、健康を目的にした場合の歩き方は、安定して大股で速く歩くのが基本だ。良い歩き方ができると肥満や老化の防止など、たくさんの効果が得られる。一方、悪い姿勢でゆっくり小股歩きの場合、歩幅が狭く、筋肉をあまり使わないため、エネルギーを消費しにくい。蹴り出す足の力や体幹が弱って間違った筋肉がついてしまう。また関節痛のもとになったりして、痛みから活動量が減ってしまい、肥満や老化の原因になる。

 生活の中で簡単に老化予防の効果を得られるエクササイズが「かかと上げ尻すぼめ健康法」だ。かかとを上げながら尻すぼめを同時に実行する。お尻をキュッと締めて、かかとの上げ下ろしをすると、ふくらはぎ、お尻、ももの内側、おなかの筋肉が引き締められる。

「上げ下ろしは10~20回くらいが目安ですが、下ろすときにどすんと下ろさないように、ゆっくり下ろすと、お尻、ももの内側、おなかのインナーマッスルが強まります。これらの筋肉が衰えると腰が丸まったり、猫背で足を引きずる歩きになったりするので、正しい姿勢を作る効果があります」
 1日に何回か実行すれば効果があるそうだ。これなら日常生活の中、例えば歯磨きの時間や通勤電車でも可能だろう。

 世の中には、正しい体の使い方を知らないまま、無理な運動や動作を続けてきたことによって、痛みや不調を抱えている人も少なくない。黒田さんによれば、「がんばり過ぎない、欲張り過ぎないことです。最初のハードルは低い方がいいです」とのこと。目標を高くして続かないより、まず自分の現状を知って、低い目標でも歩き続ける方がウォーキングを長く続けられるとアドバイスしてくれた。

 読者の皆さんも、自分の体調と無関係な「1日1万歩」などの目標に縛られてヒザを痛めたりしていては一生歩き続けられないので、ご注意。