1997年の神戸連続児童殺傷事件を起こした元少年A(33=以下A)がインターネット上に「元少年A公式ホームページ(HP)」を開設し、自身の全裸姿などの写真を合成した“作品”を公開していることがわかった。今年6月、手記「絶歌」(太田出版)を上梓して話題を呼んだA。最近になって週刊誌3誌に手紙を送付し、同手記出版の経緯を報じた週刊誌への抗議の意を示すと同時に、公式HP開設を宣言した。その不気味な内容は何を示すのか、専門家が分析した。

 Aは事件後、医療少年院に送致され、2005年に本退院した。00年ごろにAの治療に携わった臨床心理士の鈴木氏(仮名)は「存在の耐えられない透明さ」と題されたHPを見て「演出家」と表現した。

 ホームページ上の作品群からは、自己顕示欲やナルシシズム(自己愛)が感じられる。初めて見る人は事件当時に「酒鬼薔薇聖斗」と名乗ったAが描いたものだと知り、不気味さを感じずにはいられないだろう。だが、それこそがAの“狙い”のようだ。

 鈴木氏は「彼は大事件を起こした過去の自分をアイコン(偶像)と考えていて、それを語り継いでもらいたいと思っています。おぞましい絵も注目を集めるための手法。自己演出でしょう」と話す。

 同時に犯行当時、14歳の時と変わらぬ幼さが垣間見えるという。AはHPに「セルフポートレート」として、自身の半裸とみられる写真と別のものをコラージュさせた不気味な作品を公開した。

「当時も空想の話をしていましたが、今回も表現方法はファンタジー。簡単に言えば“中2病”(注‥中学2年生くらいの思春期にみられる背伸びしがちな言動)。HPにある股間からエイリアンの写真も、ぐちゅぐちゅした粘膜を連想させることで、見た人が性的な象徴と結びつけることを彼はわかっています。逆を言えば、それで作り出したのがこの作品ですから、どこか幼く見えてしまう」(同)

 AはHPを通じて世間との接点を得たいのかもしれない。その証拠がHPに設けられた読者とのメールコーナーだ。

「寄せられるメールの大多数が『不快だ』という誹謗中傷でしょうが、世間のレスポンスがある限り、彼の心は満たされるはず。無視されれば行動はエスカレートする危険もありますが、まずそうなることはないでしょうね」(同)

 一方、出版社3社に届いた手紙について、臨床心理士の矢幡洋氏は「手紙は、幻冬舎の見城徹社長が週刊文春で語ったことについて、実際はこうだったと訂正したもので、最後にいかにも“ついで”ふうに自身のHPを告知しているが、手紙の真の狙いはHPの宣伝ではないか」と分析する。

 矢幡氏は「『絶歌』出版後、しばらくおとなしくしていれば、続編のオファーなどもあったかもしれないのに、それを待てずに一銭の得にもならないHPを始めるのには、30代で成果を出さないと表現者として手遅れになるという焦りがみられる」とみる。

 大量のナメクジをかき集めて撮影したというコラージュ写真については「無力で見苦しい自己イメージをナメクジに重ね合わせているが、彼が犯行直前に描いていたのも『ナメクジ漫画』といわれる2匹のナメクジが殺し合う殺伐とした漫画でした。彼が創り出したバモイドオキ神や、遺体を隠した木をモチーフにした絵もある。自己顕示欲は今も続いていると感じた」と矢幡氏。

 Aが週刊誌に送付した手紙やHPにも遺族への謝罪の言葉はなかった。「自分を『稀代のモンスター』と表現し、事件を『20世紀末を揺るがした3大事件の一つ』とした文面に、大業を成し遂げた大犯罪者という自己規定がみてとれる。何も反省していないでしょう。このHPが、犯罪を犯してから表現行為をするという一つのモデルとなり得ることを危惧している」と矢幡氏は懸念する。

 前出の鈴木氏もAのHPの危ない広がりを「カルト教団の教祖が初対面の女性と結婚するように、Aとやりとりすることでシンパシーを感じる人はいます。特に精神的に未発達で、刺激的なものに弱い女子中学生あたりが危ない。Aもごく少数の共感してくれる相手を欲しているのだと思います」と警告した。

 遺族への事前連絡もしなかった手記は25万部を発行し、Aは4000万円もの印税を手にしたといわれる。そして今度はアーティスト気分でHP。世間の批判が再び集中するのは必至だ。