“女装姿”で男性を誘い、睡眠薬入りの酒を飲ませて金品を奪った5件の連続昏睡強盗事件で昏睡強盗などの罪に問われ、上告していた“声優のアイコ”こと神いっき被告(33)に対し、最高裁第3小法廷(岡部喜代子裁判長)が29日、上告を棄却する決定をしていたことがわかった。懲役10年とした一、二審判決が確定する。
女性として生まれた神被告は、性別違和から普段は男性として生活したが、街で知り合った男性に睡眠薬を飲ませ、金品を奪った犯行時だけはヒョウ柄ベレー帽にミニスカ姿で“女装”。逮捕後に妊娠がわかり、拘置所で女児を出産した。
一連の犯行については「声優のアイコ」の人格が行ったと主張し、法廷では4歳児の「ゲンキ君」人格が出現し、幼児言葉で「お姉ちゃんは悪くない!」と“無罪主張”するなど、多重人格障害を主張していた。弁護側は、被告に解離性同一性障害(DID)があり、別人格が事件を起こしたとして無罪を主張。東京地裁判決は「事件当時は平素の人格だった」と退け、東京高裁も支持した。
判決によると、2013年10月~14年2月、複数の男性に睡眠薬を混ぜた酒などを飲ませ、現金計約154万円や腕時計を奪ったり、盗んだりした。東京高裁は「DIDによる別人格が起こした犯罪で刑事責任能力はない」とした被告側の主張を退けていた。
神被告と面会を重ねていた知人はかつて「DIDを日本の司法でもっと考慮してもらえるように裁判を続けていきたい」と控訴、上告理由を本紙に語っていた。
一審の最終意見陳述で神被告は「俺は無罪になっちゃいけないです。求刑通りの刑で俺は仕方がないんです。きっともっと被害者はいると思う。泣き寝入りした人たちにも本当に申し訳ない」と涙ながらに反省したが一転、控訴していた。