パラ馬術・稲葉将 趣味の乗馬が一変したオーストラリア留学での出会い

2021年06月13日 10時00分

稲葉は愛馬とともにメダル取りを誓う(本人提供)

【Restart パラヒーローズ その壁を乗り越えろ(32)】人生が変わったからこそ――。パラ馬術(グレード3)の稲葉将(26=静岡乗馬クラブ)は、新型コロナウイルス禍の中でも着実に進化を遂げている。東京パラリンピックまで残り3か月を切った中、若きジョッキーには伝えたい思いがある。

「他のこともみんなと同じようにできると思ってずっとやっていた」。先天性の脳性まひで両下肢に障がいを抱えながらも、幼少期から健常者とともに生活をするのが当たり前だった。ところが「やっぱり体格差やスピード感にどうしてもついていけなくなった」と小学6年生で大好きな野球を断念。そんなときに出会ったのが馬術だった。

 当初は「バランス悪いし、高いし、怖いし、いいイメージがなかった」と苦笑い。ただ、馬と接するうちに愛着が湧き、多いときは2日に1度は地元の乗馬クラブへ通うようになった。しばらくは趣味の一環として馬に乗る日々を過ごしていたが、大学時代のオーストラリア留学で夢に向かって輝く友人たちを見て一念発起。「馬にチャレンジしてみたい」と現所属先である静岡乗馬クラブの門を叩いた。

「東京大会に出る」と目標を定め、週5日泊まり込みで練習に励む日々。「馬も意思がある動物なので、お互い機嫌の悪い日があったりとかして、一筋縄にはいかなかった」と悪戦苦闘しながらも、競技歴わずか1年で2018年世界選手権に初出場を果たし、一躍代表候補に名乗りを上げた。コロナ禍で東京大会が1年延期になっても「純粋に練習する時間が増えた。技の精度のアップにすごく時間を割けた」と有効活用。昨年11月の全日本大会では圧倒的な強さで3冠に輝いた。

 出場が確実視される東京大会に向けて「今までパラ馬術でメダルを獲得した日本人選手がいないので、メダルを取って第一人者になりたい」と意気込む一方で、理想の選手像も口にした。

「同じ障がいの方はもちろん、その他の方にも競技や報道を見てもらう中で『私もこれを頑張ってみようかな』『自分もこんなふうになりたい』などのプラスのエネルギーを与えられる選手になりたい」

 さまざまな巡り合わせが重なり合い、パラ馬術の世界に足を踏み入れた稲葉。次は自分がきっかけをつくる番だ。

 ☆いなば・しょう 1995年5月23日生まれ。神奈川県出身。先天性の脳性まひで両下肢に障がいを抱えながらも、小学校時代は野球に熱中。小学6年生時に母の勧めで乗馬と出会った。当初は趣味で続けていたが、2017年から本格的に馬術を始めると、18年世界選手権に初出場。個人課目14位、団体課目10位に入った。東京大会では日本人史上初のメダル獲得を目指す。自身のモットーは「昨日よりも今日、今日よりも明日、何か一つでもよくなるように」。167センチ、58キロ。

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