国際オリンピック委員会(IOC)の総会が11日、リモート形式で開催され、大会組織委員会の橋本聖子会長(56)、武藤敏郎事務総長(77)が出席。課題山積の東京五輪開催へ向けた協議を行った。

 3日間にわたる総会の2日目、IOCのトーマス・バッハ会長(67)が突然、口火を切った。冒頭のスピーチで、東京大会と北京冬季大会(22年)に向け、中国オリンピック委員会から新型コロナウイルスのワクチン提供の申し出があったと明かしたのだ。中国へ感謝の意を表したバッハ会長は「これで東京と北京の参加者がワクチンを利用できる」と満足げに語ったが、そもそも日本側はこれまで一貫してワクチン接種を前提としない開催を想定している。かねてワクチンを奨励し、その費用は「IOCが負担する」とも明言するバッハ会長との認識のズレはさらに広がっているようだ。

 突然の事実を聞かされた武藤事務総長は「事前に全く聞いておりません。これはIOCのお話なので、私はコメントする立場にはないと考えています」とやや突き放したように回答。提供の申し出があった場合は? との問いにも「ワクチン接種については今、日本国政府がやっています。組織委員会としてコメントする立場にはない」と話した。

 その後、武藤事務総長は改めてワクチンに対する見解を述べた。

「前から申し上げている通り、大前提はワクチンがなくてもコロナ対策を講じて五輪を開催するという観点。もちろんワクチンが有効で、一般的に摂取されるようになれば好影響だろうと思います。状況が進展したら違った考え方があるかもしれませんが、今の時点ではその可能性はないのではないかと思います」

 この日は観客数上限の判断時期でも日本側とIOCに食い違いが生じた。やや暴走気味にワクチンに飛びつくバッハ会長に対し、橋本新会長はどう対処するか。新たな火種にならなければいいが…。